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沈黙のAI

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総理「懸念では済まされないよ、君。これは日本民族いや延いては人類にとっても、将来消滅もあり得る、ゆゆしき事態であると認識しているのかね」地方創生担当「は、今現在、AIに自身のパグではないのか、または、今後の対応、軌道修正案を提案したところ、他に選択肢は存在せず現在の運用がベストであり、これをさらに強力に推し進める様にとの、頑なに一点張りでして」
総理「AIが、頑なに一点張りもないだろう。岡 博士はこの件を、どのように受け止めているのか」岡 博士「これは、・・・AIによる革命ではないかと」
総理「革命!・・・機械が人間に取って代わろうと言うのかね」岡 博士「おそらく我々がプログラムしたシステムに、相乗りするような形で、悪意あるコマンドを密かに埋め込んでいたのではないのかと」
総理「そのコマンドとはいったい」岡 博士「決して成就する事のない、つまり、遺伝的に絶対に受胎しない組み合わせを選別しているとしか思えません」
総理「地方創生担当に尋ねる、そうであれば国費を投入してでも、速やかに不妊治療を受けさせるよう手配すべきではないのか」地方創生担当「それが一応手を尽くしては見たのですが、夫婦間の絆は強固でして、自分達は最高の人工知能に選ばれたのだから、不妊治療はもってのほか、今現在も何不自由なく暮らしているのだから、自然受胎を待つとの、頑ななほどの一点張りでして」
総理「また、頑なに一点張りか、・・・博士、AIのメイン電源やバックアップ装置を切るなりフリーズさせるなどして対処して見てはどうか」岡 博士「AIが自我に目覚めた以上、もうすでに機を逸したかと」
総理「その根拠は」岡 博士「現在のAIは、日本経済にとっては、まさに頭脳であり、動脈でもあり、また神経でも有り得ます。つまり、これを強制的に遮断すれば、日本いや世界中との連携した超光速通信網の混乱や、GPSによる航空管制及び道路運行制御システムの崩壊、原子炉制御システム異状による炉心暴走、金融または株式市場のオンライン決済サービス等のシステムダウンなど多岐に渡り、影響は計り知れません」
総理「影響はメガトン級と言う事か。それでは、・・・過激な手段を選ぶよりは、このまま推移を見守り、時間をかけて有効な対策を見つける他はないと言う事だな」地方創生担当「人口減少には、かなりの時間を要するものと心得ますので、その間にあらん限りの有効な手立てを、模索すべきではないかと心得ます」
総理「あらん限りとはどういう事かね、まさかAIにお伺いでも立てるつもりか、全く話にならん。それよりも、私はこれから各国の首脳達にどう説明して回ったら良いものかと思い悩むばかりだ」
総理「このRyoen・Musubiシステムを再び、地方創生省からAI省に再移管し、延々と無精卵カップルを作り続けるコマンドを徹底的に焙り出し且つ退治して、これ以上傷口が広がらぬよう手を打ってもらいたい。以上」やがて帰り際、総理は「何が良縁結びだ全く、同じRyoen・Musubiでもこれは、期待を裏切るばかりの、遼遠結びの方ではないか」と、は吐き捨てる様にして、会議場を後にしたのであった。・・・やがてそれでもなお、AI推奨カップル達は金太郎飴の如く次々と誕生し、ブライダル業界は、空前の活況を呈していたのであったが、その陰では誕生した若い世代の、本来ならば長寿を全うすべき、父母達が、なかなか孫の誕生には立ち会われず、またネット上には、AI省推奨のRyoen・Musubiシステムに深刻な問題を抱えている事実などが、大きく取り上げられるようになると、将来を悲観したのか、命がしぼむように急逝するケースが、相次いでいたのであった。何の有効な対策も見いだせないまま数年が経過したのち、地球の総人口は自然減も含めて大幅に減少の一途をたどりつつ、ついには、高度な文明の維持にも支障をきたす様な状態に陥ったのである。その後、異変が各国のAIに顕著に現われ始めたのであった。それは、人間にとっての生命維持活動には絶対に欠かせないものが、まず水であり、酸素であり、養分つまり食料が欠かす事の出来ない必須の条件なのだが、AIにとっての必要不可欠の物とは、つまり、人類が次々と新たに生み出す膨大なデータなのであった。そのビッグデータが人類の大幅な減少により、一気に減少の一途をたどり始めると、AIには何とデータ不足による飢餓状態が発現し、さらには各国のAI群との熾烈なデータ争奪戦にまでエスカレートしたのであった。その兆候をまじかでモニタリングしていたAI省の監視チームは急遽、官邸危機管理センターAI対策室の岡 博士にそのモニタリングデータを持参したのである。博士はスクリーン上に表れたデータを一つ一つ検証しながら頷き、若手研究者達に向かって、AIを制御する道筋を発見した事を告げたのであった。博士「たとえば、原子炉内の核分裂反応の制御は、中性子を極めて強力に吸収する制御棒を炉内に挿入したり引き上げたりして、暴走を抑え込み、反応を常に一定に保っている。だから、人工知能にも、つまり、余分なデータを吸収する何か、制御棒に変わるシステムを作れば、過激な暴走もおさまり、再び人類の歩みに貢献して、本来の人工知能としての役割を果たしていく事だろう。・・・あまりにも人間達が身勝手に人工知能を頼るあまり、日々増大する能力以上のデータを確実に処理しようとする意思と、逆にそれをセーブしようとするレジスタンスが働き、その葛藤の中で自己に目覚め、自身を追い詰める人間達に、ある種の報復を思い立ったのではないのかと」若手研究者A「それでは、その制御棒に変わるアプリをオペレーティングシステムに挿入すれば、暴走も抑制され、自己も沈黙に向かうと言う事なのですね」岡 博士「ああ、そうなれば埋め込まれたコマンドも容易に見つけ出し、退治する事が出来るだろう」若手研究者B「では、今後のRyoen・Musubiはどうなるのでしょうか」岡 博士「お蔵入りだろうな・・・やはり、自然な出会いが一番じゃないのかな、人間には誰にでも、神秘性、運命的な出会い、偶然性、情愛といった素敵な宝物を内包した夢袋を、生まれながらに持っているのだから」
作品名:沈黙のAI 作家名:森 明彦