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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 浮気 三話

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「なに?」

「こっちへ来ない。みんなと話そうよ」

「ええ?母さん居るし、いいよ俺は」

美樹は秀一郎の気遣いが嬉しかった。

「じゃあ、お母さんも一緒にみんなで話そうよ。せっかくの機会だし」

秀一郎と美樹は顔を見合わせて頷くようにして、ゆっくりと美那子のいる場所まで移動した。
タイルをぎゅっと押さえていたから、美那子はくすっと笑った。
部屋で仲居が「男の方はタオルで隠れます」と言った言葉を思い出したからだ。

「何笑っているんだよ、もう」

「笑われるようなことになっているの?」

これには女子大生全員が大笑いした。美樹はこの言葉を聞いて秀一郎がかわいそうに思えた。美那子は結構いじわるな性格なのかも知れないと、自分に似ていることが悔やまれた。

「私たちは星ヶ丘の3年生です。美那子さんと同じ学校だと聞かされてこれも縁なんだとお話が弾みました。お兄さんは名古屋大なんですね?何年ですか?」

「同じかな3年だよ」

「就活はこれからですよね?決まっているんですか?」

「いや、決めてないけど父親に良かったら推薦すると言われているので一応そうしようかと思っている」

「ええ?お父様社長さんですか?」

「違うよ、銀行員なんだ」

「ひょっとして横文字使っているところですか?」

「うん、合併したからね」

「すごい!エリート一家じゃないですか」

「そうでもないけど、ねえ母さん?」

美樹は二人の会話にニコニコとして聞いていた。

「そうね、お父さんはエリートだけど、あなたたちは私も含めてどうかしら」

「おば様それは違いますよ。私たちの学校は中学高校から上がってくる人が半分以上で、皆さんお金持ちばかりです。違う高校から来ている人は普通ですよ。私もそうなので普通の家庭です」

「美幸さんと言われたわね。普通とエリートなんて何が違うのかしら?」

「おば様はもちろん専業主婦ですよね?」

「ええ、そうね」

「私の母も、ここに居るほとんどの友達の母親も仕事をしていますよ。それは生活のため。最初にホテルのロビーで三人を見たときに、お金持ちだってすぐにわかった。だから美那子さんとお話がしたいって思ったの」

「言われてみれば結婚してから仕事はしてこなかったから、楽はさせてもらっているわね。でも、エリートだなんて言われたこともないし、思ってもいないのよ。それは美那子や秀一郎も同じ考えだと思うわ」

美那子は何だか美幸に金持ちだから近づいたと言われて悲しい気持ちになった。
自分の中にはそんな思いは微塵もなかったから、家庭によって考え方も変わってくるのだろうかと悩んだ。