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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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トロントの音楽隊 第2部

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 さて、ある日の夜のことです。MONSTORONTO(モンストロント)があるプレハブの建物のそばを通ったとき、ギターの九尾の狐がくんくんと鼻を鳴らして言いました。
「ここには、世界征服を企む悪の組織の連中が隠れている」
 彼の言葉を聞いて、ほかの3体も正義の血が沸くのを感じ、彼らの目が妖しく光りました。ヴォーカルの人魚が、ひっそりしたトーンで言いました。
「そいつらにつらい目に遭わされた人が、たくさん居るでしょうに」
 九尾も言いました。
「悪の組織の者どもには、己の真っ赤な血がよくお似合いだ」
 ベースのビッグフットも腕を回しながら言いました。
「オイラ、悪ィ人間は大っ嫌いだ!ボッコボコにしてやる!」
 ギターの猫又が、声のトーンを大幅に落として言いました。
「そうと決まれば、こいつらの所に乗り込むニャン!」

 猫又が悪の組織のアジトの窓ガラスを破って侵入しようとすると、九尾が止めました。
「やめろ。むやみに侵入しては返り討ちに遭う。ここは俺に作戦がある」
 彼は小声で仲間たちにその概要を話しました。
「…よし、それで行くニャン」
 そして人魚と九尾、猫又とビッグフットの2チームに分かれて、猫又とビッグフットが物陰に隠れました。
 準備ができると、人魚が歌い始めました。マイクを使わなくてもよく通る歌声で、楽器を使わなくても音程もリズム感も文句なしでした。

 外から突然美しい歌声が聞こえてきたので、黒い目出し帽をかぶった黒ずくめの男たちと亀の化け物のような男が、何事かと外へ出てきました。見ると、絵に描いたようなブロンド美女が楽しそうに歌っていました。そのルックスと美声に彼らは目と心を奪われて、
「フニィ〜」
 と気の抜けた奇声を出し、彼女を攻撃する気になれませんでした。

 歌う人魚の横で九尾は印を結び、念を込めました。するとどうでしょう。黒ずくめの男たちと亀の化け物のような男は、いい香りのするお風呂につかり、そのそばで人魚にお酌をしてもらい、それを飲むという五感に心地良い幻影に浸りました。
 それから30秒とたつ前に猫又とビッグフットが物陰から出てきました。猫又は鋭い爪で引っかき攻撃や、見かけ以上に強力なネコパンチで男たちを攻撃しました。ビッグフットは、その名のとおり大きな足を使うキックや、岩のように固い頭を生かした頭突き攻撃を亀怪人に喰らわせました。そんな乱闘を見ながら、人魚はなおも歌い続けました。

 こうして、猫又とビッグフットはアジトに潜んでいた全ての構成員を気絶させました。九尾はアジトの壁に何やら印を書くと、仲間たちに建物から50mほど離れるように言いました。九尾が印を結ぶと、またたく間に建物が真っ赤な炎に包まれました。炎の中に崩れていく悪の組織のアジトを尻目に、MONSTORONTOは無表情でその場を後にしました。