15話 あとは野となれ山となれ ー カラス ー
朝早く…久しぶりの散歩。
去年、冬になるまでずっと歩いた散歩道…寒くなり、歩くのは一時お休みしてた…。
今年、猛暑が去り気候が良くなってきたので、毎日とはいかないが又、同じ道を歩いてる。
私の10メートルほど前を歩いていたお年寄りが"その場所”を通りかかると、突然騒がしくカラスが鳴き出した。
あれ?…そうだ、この場所…去年は私も大分カラスに威圧された。
住宅地を抜けて雑木林の方を歩いて行くと、カラスの巣があり子育てをしているらしく、人の姿を見ると緊急事態を知らせるように大きな声で「カッ!カッ!カッ!」と鳴き、樹の上で大きな羽を広げ地団太を踏むように抑圧し飛び跳ねる。
人の姿が通り過ぎて行くと「ホー…ホー…アホー…」と緩んだ鳴き声に変わり、緊急事態解除の知らせを仲間に送る。
突然の大騒ぎにその時のことを、思い出した…そお言えばいつの時か、その鳴き声も聞かなくなった。
今年は一度もカラスの鳴き声は聞いたことがなかったので…そうか…まだ、居たんだ…。
その後、私が通りかかるが…あれ?…鳴かない。
見上げるとあっちを見たりこっちを見たり警戒してるカラスの姿が見える…が、私の事は見ても鳴かない…無視してる…あれ!?…。
そうか…去年もいつの間にか鳴かなくなって…私の顔を覚えたってことなのかな?
嘘!…本当?
苛めたりするとその人を覚えていて頭突っついたりして、追っかけまわすって聞くけど…。
顔覚えるって本当なんだなあ…って事は…去年のカラスってことなのかなあ…。
私を見かけるとあゝあの人だ…なんて思ってくれてるのかなあ…。
これって、カラスに知り合いが居るって事?…ちょっと嬉しい。
作品名:15話 あとは野となれ山となれ ー カラス ー 作家名:のしろ雅子