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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 旅行 一話

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美樹がそんな会話をしている二人に笑いながら尋ねた。

「美那子、お兄ちゃんの何が変って思っているの?」

「だって、お母さんと目を合わせないんだもん!」

娘からそう聞かされて美樹はハッとした。
昨日のことを気にしているのだと。
秀一郎は席を立った。

「美那子、ほら気にしちゃったじゃないの。男の子は母親とのことを言われるのが嫌なのよ」

「だって昨日までそんなことなかったじゃないの。お兄ちゃんと何の話をしたの?私のアルバイトのこと以外に何か話したの?」

「話してなんかいないよ」

「うそ!私はお兄ちゃんのことは何でもわかるの。明らかに変だった。お母さん隠してる」

「隠してなんかいないよ。美那子のお友達にお母さんの気持ちを伝えて欲しいと頼んだだけ」

「いいよ、もう。学校に遅れるから」

美樹は言えなかった。自分のしたことを秀一郎がここまで気にしていたという事は意外だったからだ。
まさか・・・いや、それは無いだろう。だったら何?
そんな問答を心の中でしていた。

美那子は来月に迫った夏休みに旅行がしたいと考えていた。
少しアルバイトを入れて泊りがけで東北か北海道へ行きたいと計画を練っていた。
そんな話をバイト先の千佳としていた。

「いいわね~美那子ちゃんは、夏休みがあって。私なんかここを始めてからずっと休みらしい休みもなく働いてきた。子供たちともどこへも出かけていないからちょっと羨ましいわ」

「そうなんですね。かわいそうな気がします。だったら思い切ってお休みとって旅行しません?」

「ええ?旅行。誰と?」

「私では不満ですか?」

「美那子ちゃんと?二人同時になんか休めないよ」

「ああ、今月で辞めますから大丈夫ですよ」

「辞める?どうして?」

「親との約束なんです。今月で辞めるって」

「そうだったの。なんか寂しいね、仕方ないんだろうけど。でも私と旅行に行っても楽しくなんかないんじゃないの?」

「そんなことないです。それにもう一人同伴する人がいるので、良かったらご主人も誘われたらいかがですか?夫婦で行くのもいいんじゃないですか」

「夫を誘う?それは無理よ。あの人今は最高に忙しいから。私は遠慮するからあなたたち二人で行ってらっしゃい。誘ってくれてありがとう」

千佳は美那子が彼と一緒にゆきたいから自分をダシに使おうと誘ったに違いないと思った。若いっていいなあ~そんなスリルが自分も昔にはあったと思い出していた。