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のしろ雅子
のしろ雅子
novelistID. 65457
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3話 あとは野となれ山となれ   ー女優ー

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3 女優

以前、アングラ劇団の女優をやっていた友人がいて真夏、暑い、熱い…
野外のテント劇場で演技をしていたのを思い出した。
 初めは劇団のスタッフのようなお手伝いで呼ばれてその劇団の主宰者に熱望されて女優になった。
「自分を汚さなくては真実は見えない」と、持論を唱える主催者にだんだん傾倒していき、それから劇団員たちの共同生活へ自ら加わり、知ってる彼女とどんどん変わっていった。
 週刊誌に彼女の裸が掲載されたりして、彼女にとってそうする事が自分をどんどん汚す事であったらしい。
 彼女の変身ぶりを見て、俗人には分からない、精神世界で一歩ランクを上げたのかも…そんな風に思ったりもした。
 別世界に行っちゃったみたいな…
 上半身裸になって腰に布を巻いて演技してたあの暑い野外テントがこの夏の暑さとダブって彼女の息遣いが思い出された。
やがて、劇団が封鎖されたといううわさは聞いたが…。

 あの時彼女はどんな世界を見たんだろう。
 自分を汚すことに専念した彼女は…真実を見たのだろうか…いったい…何を見たのかな…。
 蜃気楼のように消えた彼女を思い出した。