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『暑いよ! ライダー!』(ライダー! シリーズ)

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「ああ……訓練が厳しすぎて体力使い果たしてるし……」
「熱中症で倒れた仲間もいるからなぁ……やっぱ酷暑日に屋外で暴れるのは自殺行為だよな……」
「この覆面と全身黒タイツも暑苦しいしな」
「ああ、そうだな、脱いじゃおうか」
「そうだな」
「そうだな」
「そうしよう……」
「コラっ! 戦闘に於いて戦闘服を脱ぐとは! 敵前逃亡に等しいぞ!」
 死神博士は地団太を踏むが、戦闘員は座り込んでしまい動こうともしない……。

 一方、ヌリカベの陰の志のぶと晴子はクナイにせっせとスルメを突き刺していた。
 実は仮面ライダー・マッスルこと納谷剛にショッカーの情報をリークする者がいたのだ。
 今は東北で農業に勤しんでいる親友、冨樫だ。
 死神博士を見限った戦闘員の一人が密かに冨樫に連絡を取ったのだった。

「これ位でいいわ、野外調理のお時間は終わり、見てらっしゃい」
 志のぶことレディ9はヌリカベの陰から躍り出て火の玉目掛けてクナイを投げつける、するとたちまち香ばしい匂いが辺りに漂う。

「……ん? この匂いは? どういうことだ、どうしてスルメを炙る匂いが立ち込めるのだ!……いかん、身体が……身体が……」
 死神博士は身悶えしながらイカデビルに変身して行く!

 そのすぐ脇ではシューゾー・改が孤軍奮闘中、至近距離では火の玉サーブは使えず、火の玉アタックしか攻撃法がないシューゾー・改、3対1では分が悪い、身体が熱く燃え上がっているのでライダー達も手は出せないが、闘牛士よろしく火の玉アタックをひらりひらりとかわし、シューゾー・改は翻弄されてばかりで右往左往している。
「近寄るだけでも暑苦しいが……これでも食らいやがれ!」
 マッスルの十八番、プロレス名物・折りたたみパイプ椅子攻撃が炸裂した。
「ぎゃあ! やられた! でも僕はくじけない! もっと熱くなって帰って来るぞ~」
 シューゾー・改はそう叫びながら吹っ飛ぶが、その先には……。
「ウワッ! 来るな! 寄るな! 炙られてしまうではないか! 触手が! 触手が丸まる、身体のぬめりが乾く! これは堪らん!」
 イカデビルに変身してしまった死神博士は一目散に逃げて行く。
「あ、博士、待って!」
 シューゾー・改がその後を追う。
「来るなぁ! 近寄るなぁ!」
「待って! 待って下さいよ~!」

 ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「なんだかアメリカのアニメみたいだな……」
 ライダーが苦笑した。
「違いない、触手をバタバタさせて逃げる様ったらないぜ」
 マッスルも心から可笑しそうに笑ったが、すぐに真顔に戻った。
 そこら中に全身黒タイツと覆面を脱ぎ捨てた戦闘員が座り込んでいるのだ。
「お前たち……」
「納谷さん……」
 古顔の何人かはショッカー時代のマッスルの同僚だった男たちだ。
「俺達、ショッカーをやめます」
「そうか……行く宛てはあるのか?」
「まあ、心当りがあるのもないのもいますけど、俺達は死神博士に騙されてプチ改造されちまった身ですから……」
「そうか……高熱は?」
「まだ一回ですが……」
「やっぱりあったんだな?……ライダーマン、薬をやってくれないか?」
「いいとも、ショッカーを抜けると決めたのならね」
「ええ、死神博士にはほとほと愛想が尽きました、とても付いて行けません」
「目が覚めて何よりだよ」
「でも悪いことばかりじゃないんで……筋力は常人の二倍になってますから、肉体労働するつもりならどうにでも食っていけると思うんです」
「そうだな、富樫も元気でやってるよ……冨樫に死神の弱点をリークしたのは?」
「ええ、俺です、少しは役に立てましたか?」
「ああ、充分に」
 マッスルたちの会話を聞きながら、ライダーマンはマシンに跨った。
「では、私はひとっ走りアジトへ戻って薬を取って来るとしよう、少し待っていてくれ」
「ライダーマン、後輩の為に……恩に着るよ」
「いいさ……イカは英語でデビルフィッシュと言うんだ」
「ん? だから?」
「デビルフィッシュならぬ、デビルフィニッシュになると良いな」
 そう言ってライダーマンはエンジンを掛け、ニヤリと笑いながら一言付け加えた。
「お後がよろしいようで……」
 ブロロロロ……デテケデテケデテケデテケデテケデテケ……
 ライダーマン・マシンのエンジン音が打ち出し太鼓のように響きながら遠ざかって行った。