魚(ぎょ)っちゃんのコンサート
魚っちゃんの後ろから、宇宙の某帝国の司令官…ではなく、もう一つの海の国のお姫様が歩いてきました。彼女はふぅーと一度息を吐くと、
「次は私が歌う。マイクをよこして、客席に行け」
と言いました。魚っちゃんは、このお姫様の言うとおりにしました。海亀さんたちは、しぶしぶ曲を演奏し始めました。暗くて重い行進曲のメロディーの歌をこのお姫様が歌いましたが、その歌声は魚っちゃんとは逆で、ひどいものでした。聞いていた人たちは、耳をふさぎました。
さらに悪いことには、もう一つの海の国のお姫様の歌声のせいでお城の壁のところどころにひびが入ったり、貝のスポットライトが落ちて壊れてしまったりしたので、彼女以外はパニックを起こしました。自分の家を半壊された魚っちゃんは目に涙をためて、
「私のおうちが…。うわ〜〜ん!」
と大泣きしてしまいました。
しかし、もう一人のお姫様は歌うのをやめると、
「知らぬ」
と言って、さっさとその場を立ち去りました。
浦島太郎は、あきれたようにつぶやきました。
「乙姫ちゃんが普段歌わないのは、こういうわけか…」
海底の覇権を争う国々の姫たちは、こんなにも違うのですね…。
作品名:魚(ぎょ)っちゃんのコンサート 作家名:藍城 舞美