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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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age15,悩んで迷って

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2年前の3月、14歳のスティーブン・シュルツは人気バンド「イェーツ・マーロウ&オドネル」のヴォーカル、フィル・イェーツの家に呼ばれた。リビングには、ギターのヒューゴ・マーロウとベースのジミー・オドネルも居た。
「僕と話したいことって、何でしょうか」
「単刀直入に言うよ。うちのバンドに入らない?」
 フィルの勧誘に、スティーブンは驚いて思わず彼の顔をのぞき込んだ。
「僕が…ですが」
 彼は何とか言葉を絞り出すと、3人が軽くうなずいた。
「え…いや、その…」

 スティーブンが「イェーツ・マーロウ&オドネル」に入るということは、彼らの前身バンド(LOVE BRAVE)と同じ4人組になる。それはつまり、彼がその亡父ティムの後釜プレーヤーとなることを意味するのだ。
(こんな大役、俺に務まるのかな…)
 彼の心はそんな思いでいっぱいだった。
「いや…、父さんの後任なんてプレッシャーがすごそうですし、僕には…本当に難しいです」
 すっかりビビっていたスティーブンは、しどろもどろなことしか言えなかった。あげくの果てには、こんなことまで口走ってしまった。
「それに…それに…カナダの大物バンドに、僕なんか必要ですかねぇ?」

 それでも、フィルは力説した。
「うん、必要さ。僕たちはティムの魂が帰ってくるのを、10年以上ずっと待っていたんだ。スティーブンはその息子だから、彼からいろいろな要素を受け継いでる。僕にはそう見えるんだ」
 ヒューゴも強くうなずいた。
「俺にとっては、『音楽をやること』とは『LOVE BRAVEをやること』だ。Y.M.&OD.もそれなりに良かったが、俺はやっぱLOVE BRAVEとして音楽をやりたい」
 ジミーも口を開いた。
「自分たちは何曲かヒット曲を出したし、18万人ライブもやった。だけど、ティムのことは片時も忘れたことがない。かといって、いつまでも『空席』があることももどかしく感じてた」
 フィルたちはY.M.&OD.としてスターダムに上がっても、もう一人のギタリストの居ない寂しさはどこかで感じていたようだ。

 あらためて、フィルが言った。
「もしティムが、その席に座るのがわが子だと知ったらきっと大喜びして…」
 一度言葉を切ると、彼はスティーブンの近くまで来て、彼をぎゅっと抱き締めた。予想外のアクションに彼はびっくりして、少し間抜けな声を出した。
「こんなふうにするだろうな」
 少年は父のハグをイメージし、軽く笑った。
「…そうなんですね」
 スティーブンは相づちを打ったが、この場ではまだ加入を決める気になれなかった。でも、Y.M.&OD.の本当の気持ちが分かったのは確かだった。
作品名:age15,悩んで迷って 作家名:藍城 舞美