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『新たな一歩』(掌編集~今月のイラスト~)

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 それからほどなく、グループのプロデューサーから、あおいの「卒業」が発表された。
 だが、あおいは知っている、グループにとって、プロデューサーにとってのあおいはドル箱ではあるものの、いくらでも代えの利く存在なのだ、あおいが抜けた穴はフレッシュなメンバーが埋める事になりグループに痛手はない、そして「脱退」ではなく「卒業」と称するのもあおいを使った最後のひと稼ぎを画策しているのに過ぎないことを。
「卒業公演」と銘打った公演も行われ、あおいはメンバーから涙で送り出されたが、その実、ライバルが一人消えた事を密かに喜んでいるのだ、あおい自身もそうだったから……。

 そして今、あおいはクライマックスである温泉旅館シーンの撮影に臨んでいる。
 ここまでにも何度かのセックスシーンはあったが、シーツに包まってのシーンだったり、着衣のままのシーンだったりであおいは全てを晒してはいない。
 だがこの露天風呂でのシーンは、ヒロインが死を覚悟した上で最後の情事に臨むシーン、ここであおいはカメラの前に全てを晒し、激しいセックスに燃え尽きるまで身を焦がす女を演じるのだ。

 露天風呂に姿を現したあおいは湯文字を巻き、バスタオルで胸を隠しているが、それは衣装スタッフが気を使って巻いてくれたものだ。

「準備はいい?」
 監督がそう尋ねるとあおいは力強く頷いた。
「用意……スタート!」
 監督の号令とともにあおいはバスタオルをハラリと取り去ってカメラの前に進み出た。
 湯船では教授役があおいを見つめている。
 あおいは湯船の前で湯文字も取り去って全裸となると、湯の中へと脚を踏み出した。

 それはいままでやって来たことへの決別の一歩であり、女優・あおいとしての最初の一歩でもあった……。


           (終)