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カミノケイジ、アルイハ

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「答えて下さい法相! 彼から金銭を受け取ったんじゃないですか?」
「……鈴木法務大臣」
「記憶にございません」
 ……遅い夕食を取っていたユウスケはボタンを押して、テレビ局が流してくるものを遮った。仕事を終えて帰ってきて、安らぎを欲する脳を面倒なニュースにさらすのは、マゾヒストのすることだろう。
 ユウスケは、出来立ての零細IT企業の、成り立ての社長である。「ひとり親方」から他人をも使う個人事業に移り、そこから法人に移り……ということで、勢いと忙しさが増すさなかにあった。
 その夜もひとしきり知識を拡充したり、筋トレしたり、面白そうな動画を漁ったりして、それからベッドで横になった。

 目の前の老人は言った。
「おまえは政治家になって、世の中を変えられるかもしれない」
「突然何ですか? あなたはいったい誰ですか?」
 ユウスケの問いに、老人は微笑んで答えた。
「わしは神じゃよ」

 ユウスケは目を開けた。蓄光塗料の塗られた時計の針は、二時過ぎを指していた。
「……夢か。それにしても……」
 ヘンにリアルだった。ユウスケはそう思った。自分の事業は順調である。会社が発展する見通しも明るい。そしてその先に、あの老人が言ったような状況も待っているかもしれない。
(神の啓示だったのかもしれない……がんばろう俺)

    *    *    *

 それから、八年が経った。
 ユウスケの事業は順調に進展し、彼は青年実業家として、地元とインターネット空間の一部でそこそこのセレブになっていた。
 一方世の中はと言えば、「二十一世紀中に先進国と途上国の差は無くなる」などとささやかれながら、先進諸国は相変わらず鈍重な歩みを続けていた。
 そういう中、日本では、ご存じ小泉元首相のご子息ふたりと芸能人のDAIGO氏――こちらもご存じ、竹下元首相のお孫さん――がトロイカ体制で新党を発足させるということで、未来の不透明さに戸惑う社会に新風を吹き込んでいた。血統の良さ、ルックスの良さ、性格の明るさ、話術の巧みさ……そしてDAIGO氏に寄り添うなお美しい景子夫人の話題もあって、国民の熱狂ぶりは、かつての橋下府知事や小池都知事に対するそれを圧倒するものだった。
 来たるべき国政選挙における新党の勝敗について、記者がDAIGO氏に自信のほどを尋ねた。
「MKS」
「それはどういう意味ですか?」
 「DAI語」をめぐる、DAIGO氏と記者のお約束のやりとりだ。
「負ける気がしない、です!」
 「S」は「しない」でなくて「する」とも取れるのでは……などとツッコむのは、全くの野暮である。国民は、新しいカリスマたちに夢中だった。
 ユウスケも、そういう中のひとりだった。そして、昇り続けてきた階段の新たなる高みへ進む時が、ついにやって来たと考えた。
 新党による候補者募集にユウスケは敢然と応募し、そして見事に採用された。
 地元の新聞記者の取材に、ユウスケも笑顔で答えた。
「MKSです!」

 結果を言えば、国民の期待の高さを示して、新党の獲得議席数は見事なものだった。
 がしかし、ユウスケはと言えば、あいにく現職の代議士を破ることはできなかった。相手はいかにもな感じの年配政治家だったが、それだけに簡単に陥落することも無かった。青年実業家の知名度も信頼度もまだまだで、慢心をくじかれた思いだった。
 ともあれ、戦いが済んで、疲れ切ったユウスケに、ぐっすりと眠れる時がやっと訪れた。

 ユウスケの目の前に、ひとりの老人がいた。
「……あの時の神様じゃないですか!」
 そう忘れもしない、その老人は、かつてユウスケの夢の中に出てきたのと全く同じ姿をしていた。
「『おまえは政治家になれる』って言ったの、あなた記憶にありませんか?」
 ユウスケが尋ねると、老人はきょとんとした顔で答えた。
「KG」

【神のKG・完】
作品名:カミノケイジ、アルイハ 作家名:Dewdrop