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逆行物語 第六部~奇跡の軌跡~

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ランプレヒト~ヴィルフリート様の幸福~


 不満が無い訳では無かったが、下級貴族達の不満を新産業に関わらせ、利を与える事で剃らし、中級貴族にはその下級から便宜を計らい合わす事で黙らせる。上級は元々理屈さえ解れば、大人しく従う。
 そう言った形で、発展と安定を繰り返し、領地を変化させてきた。農業も様変わりし、埋もれたには変わりないライゼガングだが、利は十分に得ている。最近は食糧庫の1つと言う地を生かし、新しいメニューを作り出せないかと若者が奮闘しているとも聞く。
 元・アーレンスバッハの食糧庫の地と手を結び、時に研鑽し合う未来が来るかも知れない。
 エーレンフェストの未来は概ね明るそうだ。
 ヴィルフリート様がハンネローレ様を案内されているのを眺めながら、私はそう思う。
「エーレンフェストの発展ぶりは素晴らしいですね。ずっと行きたいと思っていたのですけど、中々…。」
 ハンネローレ様のお立場もあって、敵わなかったのだろう事は分かる。今だから、出来る事だ。
「解ります。私もアウブでは自分の目で直接見定める事が却って難しいと、苦々しく感じた事があります。」
 
 ヴィルフリート様…? 

 私は気付いた。ヴィルフリート様の表情に。弱音でさえ計算していたヴィルフリート様の素等見た事が無かったと。もしかすれば今は亡きユストクスと2人の時には見せたかも知れないが、それは今の様に安らいだ顔だったのだろうか。
「…そう言えば、私、初恋がヴィルフリート様でしたわ。」
「私も…、貴方が妻になってくれたらと、貴族院時代に感じておりました。」
 そんな感情をお持ちであった事等、私は全く知らなかったし、気付かなかった。
 ヴィルフリート様はジルヴェスター様と違い、領地の為の政略婚だった。3人の妻を持ち、各々の子供達を別け隔てなく愛情を注ぎ、育てた。
 3人の妻を、立場に従った愛し方をされていたヴィルフリート様だが、お心が政略のみに傾けられていたとは思わぬ。きっとそれぞれに愛情をお持ちだっただろう。

 貴族院時代だけの淡い想い出。

 きっとそれだけで、懐かしさにお心が慰められているのだと思う。

 けれど。それでも。

 領地の為に過ごしただけの一生にはさせたくなかった。

 思えば私は決して良い側近とは言えなかった。今のヴィルフリート様の地盤を作ったのはフェルディナンド様だ。ヴィルフリート様が頼りにされたのは、フェルディナンド様より譲られたユストクスだけだ。

 私は昔から何もしていない。

 だからこそ、せめて。今はもう、3人の奥方は亡くなっている。ハンネローレ様も未亡人だ。お互いの子供達は自立し、自身は引退。領地への影響は余り無い。それならば。

 数ヵ月後。私は1冊の本を仕上げた。亡き母の血を、色濃く感じたのは初めての事だった。実名を公表した、その作品の題は。

 老いらくの恋。

 私の初の作品は大いに持て囃され。私は漸く、主の心からの笑顔を知った。静かに行われたお2人の星結びで。

続く