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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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遺作~ FOUR SEASONS ~

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あれは僕たちがイェーツ・マーロウ&オドネルとしてデビューして2年、8枚目のシングル「Glorious Days」の大ヒットを機に、目が回りそうなほど忙しくなった年の7月のことだった。

 サードアルバム「To be LOVED」のレコーディング前の選曲ミーティング中に、僕は懐かしい文字で「FOUR SEASONS」と書かれた1枚の録音CDを差し出した。
「これ…サラから受け取ったんだけど、ティムが家で録音したナンバーらしいんだ」
 ギターのヒューゴとベースのジミーの目もそのCDに釘付けになり、ジミーがつぶやいた。
「未発表の作品か…」
 僕は、早速CDをプレーヤーで再生した。アコースティックギターを弾きながら、ティム自身が歌っている。歌い方はとっても素人チックだけどね。僕とヒューゴとジミーは、CDを注意深く聞いた。サビと思われる部分で「僕らは愛し 愛されるために生きる」という歌詞が聞こえたとき、僕は鳥肌が立ち、涙が出そうになった。彼の部屋の壁に貼られていた、彼のモットーである「結局、あなたが受け取る愛は あなたが与える愛に等しい」(by ジョン・レノン)にも似たエッセンスを感じたからだ。メロディーもゴスペルソングみたいで素晴らしく、心地良いものだった。そしてこのナンバーは、「僕らは愛し 愛されるために生きる」という、ティム・シュルツという人間を表すようなフレーズをもって締めくくられた。

 僕はしばらく何も言えなかったけど、何とか言葉を絞り出した。
「こんなにも素敵な曲が、数年間眠っていたなんて…これはもうアルバムに入れて発表しなきゃもったいない!」
 僕たちの答えは、一つだった。


 その後、僕たちはスタッフも交えて、この隠されていたナンバーのアレンジについて話し合った。録音された曲を何度も聞いてから、歌声や演奏を重ねた。僕のヴォーカル録りのときには、このナンバーを作ってくれた親友の姿を思い浮かべながら歌った。
 ただ、僕は心のどこかで
「ごめんよティム。君の曲を僕らで勝手にいじって」
 とも言っていた。

 この魅力的なナンバーは、あるいはティムからの最後のプレゼントだったのかもしれない。

 この勢いに乗って、僕たちはインディーズ時代から歌っていたミディアムバラード曲「Aster savatieri」も収録することを決めた。作詞・作曲した本人が居ない中でのレコーディングは何とも寂しかったけど、ティムの個性を生かしつつ、Y.M.&OD.なりのアレンジをして完成させた。
 なお、これらの2曲が収録された「To be LOVED」は全カナダのチャート1位を獲得し、Y.M.&OD.のシングル・アルバム通じて初めてのミリオンセラーを飛ばした。このうれしい結果に、ティムも一緒に喜んでいたに違いない。
作品名:遺作~ FOUR SEASONS ~ 作家名:藍城 舞美