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「お酒と出会い」

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 私は、お酒に強くない。全くの下戸ということではないが、ビールをジョッキに2杯も飲めば十分酔ってしまう。
 
 社会人になったばかりの頃は、飲み会のたびに酔って寝ている私に先輩達は、「頼むから取引先と飲むときは寝ないでくれよ」と忠告したものだ。さすがに寝ることはなかったが、やや舟を漕いだことは幾度かあったと思う。
 
 酒には強くないが、飲み会は好きな質だ。大勢でワァーと盛り上がるよりは、少人数が性に合う。話しながら普段は見えない相手の一面に出会う。それが楽しい。
 
 酔えば熱が入ることもある。意気投合出来る時もあれば、相手を傷つけてしまう時もある。それがきっかけで縁遠くなってしまった人もいる。苦い思い出だ。
 
 妻と出会ったのもある飲み会だった。当時の彼女は本当にお酒に強かった。まさにザルだった。今から思えば若気の至りなのだが、そんな彼女に私は持ち掛けたのだ。ジャンケンに負けた方が目の前のお酒を一気に飲みましょうと。少し色気が出ていたのかもしれない。彼女は笑って付き合ってくれた。その後、どんな会話を交わしたのか記憶にないが、帰りには手をつないで歩いていた。それが出会いだった。
 
 あれから十数年。歳をとってさらにお酒に弱くなったかもしれない。先輩達のように若者に忠告できるような立場には到底なれそうにもない。ただ弱いなりに少しずつスマートに飲めるようになった気がする。これからもいろんな出会いがあるのだろう。楽しみではあるが、ちょっとこわくもある。
作品名:「お酒と出会い」 作家名:夢野圭介