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逆行物語 第六部~エーレンフェストの女達~

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ヴェローニカ視点~引退宣言~



 …肩の力が抜けて行くようです。

 良い意味で高みに昇りそうな恍惚とした感覚に襲われていると、フェルディナンドがまた少女を抱き抱え、結界を少し狭めて欲しい、私にだけ伝えたい事があると申しましたので、私はシュラートラウムに招かれた状態(夢心地)のまま、頷きました
「ヴェローニカ様、私はマインに一目惚れ致しました。彼女が大人になった姿さえ幻視し、彼女こそ、私の全ての女神とさえ思いました。
 そして同時に気付いたのです。私がその感情より弱くとも、同じ種類の想いをジルヴェスターに持っていた事を。」
 私はハッとして、フェルディナンドを見ました。
「貴方が…、どの様なお気持ちで居られたのか、漸く理解出来ました。昔と今で苦しみの理由が変わっている事も…。
 長い間、悲しませてしまい、申し訳ありませんでした。」
 私の視界が潤うのに気付き、みっともない事は出来ないと堪えました。魔力が蠢くのを暫し宥めます。

 ………。

 私が盗聴防止の結界を広げ、話を再開します。
「フェルディナンド、彼女は身食いなのですか?」
 人より小さい姿に、その可能性に気付きます。
「その通りです。彼女は魔術具の無い環境で生きる為、無意識に魔力圧縮を行っており、その為に魔力量が増加しております。私と釣り合う程度には。」
 私は目を見張りました。フェルディナンドの魔力量を知っておりますから。ジルヴェスターも同じく驚いておりました。
「…と言う事は問題になるのは身分差ですわね。」
 フェルディナンドが妻にしたいと言うならば、相応の身分を与えなければなりません。私が頭を巡らせている事に周囲が驚きに満ちております。
「…上級貴族でしたら、ジルヴェスターやフロレンツィアの当たりが良いでしょう。」
 私の頭に過ったのはカルステッドとエルヴィーラでございます。丁度、護衛としてカルステッドがおりましたし、その場で話が進むでしょう。しかし…、
「いえ、それは余り良い手では無いと思います。ユストクス、例のモノを。」
「はっ、」
 ユストクスが近付き、持っていた木箱を開けました。中には見た事もない花飾りに、何かの液体が入った容器、それから羊皮紙とは明らかに違う紙があります。
 フェルディナンドが花飾りを手に取り、髪飾りである事を説明し、使い方をマインが実際に頭に指し、見せられました。
 液体は髪に艶を出し、美しく見せるモノだそうです。色々驚きで意識していませんでしたが、確かにマインの髪は美しいものでございました。
 そして羊皮紙では無い紙…、それは植物紙と言うものだそうです。
「これらはエーレンフェストの新たなる産業となり得ます。貴族の家に入れば確実に、かなりの速度で拡がるでしょう。
 カルステッドの家に入れば、確実にライゼガングが動きます。増して魔力が高く、私との婚約となるのです。」
 私は眉を潜めました。フェルディナンドの言いたい事が分かったからです。単に魔力だけなら神殿入りの傷を持つフェルディナンドの権力には遠いでしょうが、エーレンフェストの躍進に繋がる物を作り出すなら、カルステッドの縁を主張し、フェルディナンドの後ろ楯になろうとするでしょう。
 幾らフェルディナンドが首を横に降っても無視される可能性が高いのです。となれば最悪ジルヴェスターの子、全ての目がなくなります。運良く免れても、ヴィルフリートは確実に将来を無くします。そうなればエーレンフェストは派閥争いで大いに荒れるでしょうね。
「お話は分かりました。ならばいっそ、養父母はジルヴェスターとフロレンツィアに任せた方が良いでしょう。」
 私はフロレンツィアを呼び出す為、オルドナンツを飛ばします。ジルヴェスターから本日の事は聞いているでしょうし、緊急の呼び出しであっても直ぐに向かえる状況ではあるでしょう。

 ……大きく、流れが変わりますね…。

 私はフロレンツィアが来る前に、宣言致しました。
「詳細は貴殿方で決めなさい。私は口出しを致しません。求められるなら、アンハルトゥングの役割を果たしますが、それ以上はカーオサイファとなりましょう。
 私の築いたモノ(派閥)はジルヴェスターとフェルディナンドに譲ります。その旨もきっちり示しましょう。」
「は、母上!?」
 驚きに満ちる周囲を代表する様に、ジルヴェスターが声を上げました。私はニッコリと微笑み、続けます。
「私はお先に失礼致しますわね。ああ、ヴィルフリートの事ですが、教育状況を記した木札を後日、お渡しします。宜しく願いますわ、フェルディナンド。」
 そう言って、側近達を引き連れ、部屋を出ました。ヴィルフリートにはかなり厳しい状況になりますが、今のフェルディナンドならば理解するでしょう。これからの話がどの様に纏まるか不明ですから、側近達には決して他言しない様に命じます。

 こうして私は表舞台を引退致しました。