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逆行物語 第一部~ダームエル~

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悲劇の理由



 「フェルディナンド!!!!」

 最早、誰もが高みに行く事を覚悟したろう、その時に響いた声。荒れ狂う魔力の渦へ突っ込んで行く、その背中。何故、此処にいるのか、どうやって此処に来たのか。その方はフェルディナンド様の御兄君、アウブ・エーレンフェストであるジルヴェスター様だった。
「フェルディナンド!!!!」
 ジルヴェスター様は寝台に上がり込み、肩を掴み、自ら視線を合わせられる。しかしフェルディナンド様の魔力は止まらない。
 フェルディナンド様を強く抱き締め、魔力の渦を作る力と対抗する様に、自身の魔力でも覆う。
 御二人の魔力差を考えれば、ご負担はさぞかし大きかった筈だ。いや、理屈を考えれば不可能だった筈だ。それでも強靭な意思の力で覆され、徐々にフェルディナンド様の魔力を押さえ込んでいった。
 あのまま放出させていれば、フェルディナンド様の命諸とも、城中の、もしかすれば城下町の貴族全員が、ローゼマイン様の道連れになったに違いなかった。

 ローゼマイン様に名を捧げる貴族は多かった。エーレンフェスト陣の旧ヴェローニカ派閥だけでなく、アーレンスバッハの貴族も居たのだ。その貴族達が纏めて高みに昇ったのだ。首脳陣は一気に居なくなり、アウブ代理となれる筈のフェルディナンド様は正気に戻らず、完全に執政は停止してしまった。
 煽りはローゼマイン様の覚え目出度き平民達にも渡る。…グーテンベルク、ルネッサンス、そう、ローゼマイン様の大切な家族達へ向かったのだ。

 …守り切る事は出来なかった。

 アレキサンドリアには様々な利権があり、他領からの干渉は侵略に等しかった。例外はエーレンフェストだけで、事態を重く見たツェントによって、アレキサンドリアの執政をエーレンフェストに任せる命を出した。フェルディナンド様が正気に戻るまで、或いはレティーツア様が成人するまでと言う一定期間のみ、の筈だった。

 その更に2年後、ジルヴェスター様が高みに昇るまでは。フェルディナンド様が高みに昇るまでは。

 原因はフェルディナンド様。正気を失ったフェルディナンド様は度々、お命を削る様に魔力を暴走させており、押さえ込めるのはジルヴェスター様しかいなかった。そしてそれはジルヴェスター様にも、お命を削らせていたのだ。当然の事、魔力量が少ないジルヴェスター様の方がご負担大きく……、限界が来たのだ。
 ジルヴェスター様の隠し部屋にて起こった事故、詳細は分からぬが、記憶を読んだヴィルフリート様が言うには、ジルヴェスター様の最後、フェルディナンド様は正気を取り戻されたらしい。まるで……、ジルヴェスター様のお命を引き換えにする様に。そして、フェルディナンド様は……、その罪悪感からだろうか、自らの意思で、高みに昇られたのだ。

 …同情はあった。事情も解る。だが不幸な事故と片付ける事は出来なかった。フェルディナンド様は、ジルヴェスター様を殺害したのだから。その絶望で。