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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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旧説帝都エデン

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 紅い花が散る。血を欲する妖刀は殺葵の腹を貫いた。時雨の手によって――。
「ぐはっ……呪が自らの魂をも喰らうか……」
 吐血する殺葵であったが、その表情には苦痛の色はない。彼はやすらかな顔をしているのだ。
 妖刀を掴む時雨の手と腕がわなわなと震える。それは妖刀の力か、それとも……?
 震える身体を抑えながら時雨は吐き出すようにやっとの思いで口を開いた。
「なぜ殺葵はこの世界に出て来た、いや、なぜボクの前に現れた?」
「私は外に出る気などなかった、封印は破られたのだ。この都市は、いや、この世界全体は奴の手のひらの上で躍らされているのかもしれない……」
「ボクもそう思うよ、親愛なる友人――殺葵」
 殺葵の後方の空間が地獄の唸り声をあげて裂けた。そして、空間の裂け目から二本の雪のように白く美しい手が突き出ると、そのまま殺葵の身体を抱きしめるようにして掴んだ。
《僕と共に永久を逝きよう》
 次の瞬間、白い手に力が込められ殺葵の身体を闇の中へ引きずり込んでいってしまった。空間の裂け目に大量の風が流れ込み、そして、裂け目は消えた。何ごともなかったように――。
 立ち尽くす時雨の手には妖刀殺羅が残っていた。

 魔剣士 完