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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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第5話 旅は道連れ!? ワクワクでファンタジックの魔法界へ!


 10年前のこと、魔法界では幼少の子供に親が簡単な魔法を教えるのが習(なら)わしになっている。ラナにも4歳の頃に母親から魔法を教わっていた記憶があった。
「キュアップ・ラパパ、コップよ少しだけ右に動きなさい」
 彼女が魔法のステッキを振ると、水の入ったコップが少しだけ右に動いて止まる。それを見ていた幼いころのラナは小さな手で拍手した。
「お母さんすご〜い!」
「さあ、ラナもやってごらんなさい」
「よ〜し、見ててねお母さん!」
 ラナは生まれた時にもらったひまわりのクリスタルが付いたステッキを出し、それを一振り。
「キュアップ・ラパパ! コップよ動いて!」
 水の入ったコップには何の変化もなかった。母と娘がじっとコップを見ていると、やがてそれが小刻みに震えだす。二人ともコップがちょこっとでも動くと思って見ていた。しかし、そんな想像を超えるとんでもないことが起こる。水の入ったコップが爆(は)ぜたのだ。
「キャッ!?」
「うわあっ!?」
 コップが粉々に砕けて中の水が飛び散り、母子は驚きのあまり呆然となった。母親の方はすぐに娘を気遣っていった。
「大丈夫ラナ、怪我はない!?」
「う、うん、平気だよ。びっくりした〜」
 その時、母がひどく心配そうな顔をしていたのをラナは今でもよく覚えていた。
 その翌日に、ラナはなぜか病院に連れていかれた。
 病院の先生はラナの頭に白い花を挿し、それが赤い色に変わると母親を呼んだ。ラナは母から外で待つようにいわれていた。
 病院を出て家に帰るときに、ラナは母の箒の前に乗っていた。ときどき母の顔を見上げると、なんだか浮かない顔をしていたのを覚えている。母が箒を駆り、ラナが空中で気持ちの良い風を感じる中で、母親はこういった。
「ラナ、わたしはあなたの笑顔がとても好きよ。ラナの笑顔を見ると、とても元気になるの」
 ラナが笑顔になって母を見上げると、彼女はいった。
「これから、あなたには辛いことがたくさんあるかもしれない。けれど、その笑顔があなたを幸せにしてくれるわ。それを決して忘れないでね」
 そのとき母のいった言葉の意味の半分は、ラナは魔法学校に入ってから知った。
 ラナは庭で夜空の星を見上げて今は亡き母の思い出をたどっていた。ラナは星空に笑顔を浮かべる母を見ていった。
「お母さん、わたし今すっごく幸せだよ! とっても素敵なお友達がいて、こんなお城みたいなお家でくらせて、プリキュアにもなれちゃった!」
 ラナは魔法の杖を出して、今の幸せな気持ちを込めて、ひまわりの水晶を夜空に向けて魔法をかけた。
「キュアップ・ラパパ! あした天気になぁれ!」

 翌朝、津成木町を局地的な豪雨が襲った。制服姿の小百合は玄関にくると、革靴をはきながらいった。
「朝から大雨なんて、まったく嫌になるわね」
「ごめん小百合、わたしのせいだ!」
 後からきたラナが鞄を持って小百合の前に立っていた。
「はぁ?」
「昨日の夜にわたしが魔法をかけたんだよ、あした天気になぁれって」
「天気どころかどしゃ降りじゃない……」
 小百合が白い傘を持ち玄関の扉で止まると、建物や地面に叩きつける大粒の雨の音が凄まじく、足元から小刻みな振動まで伝わってくるように感じる。小百合は朝っぱらから降りしきる雨が憎たらしくなった。
「もし雲の上で雨を降らせている神様とかいたら、びんたしてやりたい気分だわ」
「え、びんた!?」
 ラナは小百合の言葉に怯んだが、勇気を出して靴をはき、小走りで小百合の前にきて頬を向ける。
「いいよ、思いっきりやって!」
「あんたは何をやってるのよ……」
「だからぁ、この雨はわたしの魔法で〜」
「もういいから、学校に行くわよ。はい、傘持って!」
「あう〜」
 小百合とラナは白い傘と黄色い傘を開き二人寄りそって、大雨の中登校するのであった。

 リコは水晶玉と向かい合い、それに映る者を見つめていた。その隣にモフルンを抱きながらみらいも座っているが、全く元気がなかった。
「そうか、そのようなことになってしまったか……」
 水晶に映る校長は神妙(しんみょう)な顔をしている。事態は彼がそうならなければ良いがと考えていた、悪い方向に進みつつあった。
「あの二人がプリキュアであることは間違いないと思います。ブレスレッドにリンクルストーンも付けていましたし……」
「リンクルストーンじゃと? もっと詳しくはなしてもらえんかね」
「黒いリンクルストーンでした。あの形は、わたしたちのダイヤと同じ……」
「黒いダイヤのリンクルストーンとは……」
「校長先生はなにかご存知なんですか?」
「わからぬな。伝説のリンクルストーンは頂点のエメラルド、四つの護りのリンクルストーン、7つの支えのリンクルストーン、合わせて12個のはずだ。それ以外のリンクルストーンが存在するなど、聞いたこともないが……」
「あの二人は宵の魔法つかいと言っていました。そんな名を聞いたことはありますか?」
 水晶を見つめるリコに校長は無言で首を横に振った。
「校長先生でも何も知らないなんて……」
「伝説にも語られぬ新たなリンクルストーンの出現に、それに関わる黒いプリキュア、謎は深まるばかりじゃのう」
 それから校長は、リコの隣で目を伏せてずっとふさぎ込んでいるみらいを気遣った。
「みらい君の元気がないようだが、大丈夫かね?」
 顔を上げたみらいの大きな瞳には涙が溜まっていた。
「校長先生……」
「同じプリキュアに攻撃を加えられたのだ、気を落とすのは無理からぬことだ。今はゆっくり休み、心を落ち着けなさい」
「……あの人は、悪い人じゃないよ。きっと、きっと、なにか理由があるんだよ」
 そういうみらいの目から涙が零れていた。同じプリキュアならば、心を通わせて、共に笑い、共に苦しみ、共に戦っていく。それがみらいにとって当たり前のことであり、みらいの信じていた世界だった。それが浜辺に築かれた砂の城が波に洗われるように崩壊してしまった。それを感じたみらいは涙を止められなくなっていた。
「モフ、みらい……」
 モフルンが心配そうにみらいの顔を見上げる。そんなみらいをリコがそっと抱き寄せると、みらいはリコの胸の中で声を上げて泣き始めた。それを見ていた校長はいたたまれなくなり、とにかくこれ以上みらいを苦しめないように配慮した。
「わしは魔法図書館の書を徹底的に調査し、新たなリンクルストーンに関する手がかりを探してみよう。後の事は君にまかせるよ」
「校長先生、よろしくお願いします」
 校長が水晶の向こうで頷くと、その姿は消えていった。リコはそのまま泣いているみらいを抱いていた。みらいが落ち着くまでそうしているつもりだった。リコだって同じプリキュアにだまし討ちをされて悲しかったが、それ以上にダークネスのことを考えると、胸の中心あたりに一塊の熱のようなものを感じた。それはリコが生まれて初めて感じる未知の感情だった。

「わたしはショックだよ〜、あ〜う〜」
 ラナは朝からベッドの上で転げまわっていた。リリンは羽を動かしながら空中でそんなラナを見下ろしている。
「朝からゴロゴロするなんて、ラナは自堕落(じだらく)デビ」
「自堕落じゃないよぅ、苦しいからゴロゴロしてるんだよぅ」