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MEMORY 死神代行篇

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07,対決





「説明なしで悪かったな、コン。滅却師とかいう輩が、お門違いの恨みを私にぶつける為に虚を誘き寄せる餌を撒く心算らしい。ルキアと浦原さんは事情を知ってるから、お前は私の体を預かってくれ。怪我するなよ?」

 一護は手の中のコンを握りながら早口で捲くし立てる。
 コンには事情は呑み込めないが、一護には迷惑な事態が降り掛かりそうな事は理解った。
 ルキアに懐いて一護の下に身を寄せたコンは、女らしいボリュームのない一護に魅力を感じる事はなかったが、一護の肌が群を抜いて綺麗な事には気付いていた。正しく玉の肌と呼ぶに相応しい一護の肌に傷跡を残すのは嬉しくない、とコンも思う。なので、預かった一護の体に傷を付けないようにしようと心に誓っていた。
 ルキアが尸魂界に発見されて連れ戻される切っ掛けになる事件だった筈だから、事を起こすのは不本意なのだが、しかし、この先の事を考えるとルキアが尸魂界に連れ戻される必要もある。
 一護は雨竜の気配を追って先回りを図る。

「黒崎。」
「おや、学年首位様が、ベストテンに入るのが漸々の私の名前を憶えていて下さったとは意外。」
「………。」

 一護の皮肉に、雨竜は言葉を呑む。
 このまま呑まれるわけにはいかないと思い直し、雨竜は眼鏡を押し上げる。

「滅却師として、僕は君に勝負を申し込む。」
「“滅却師として”?」
「そうだ。」
「………。」

 断言する雨竜に、一護は腕を組んで溜息を吐く。

「断る。」
「!……ああ、そういえば君の力は朽木さんから貰ったものだったか。朽木さんの許可なしじゃ何も出来ないわけか。」
「……挑発してるのかな? 私は大概短気だけど、そんな下らない挑発に載るほど莫迦じゃないんだけどね。」
「なら……」

 雨竜が撒き餌を取り出す。
 それを見て一護が顔を顰めるが、雨竜は構わずに握り潰した撒き餌を投げる。
 一護はぬいぐるみから取り出した丸薬を呑み込む。死神化した一護は溜息を吐くと、斬魄刀ではなく晶露明夜を取り出す。一護の斬魄刀を見た事のない雨竜は、晶露明夜が一護の斬魄刀かと思い、莫迦にしたように鼻先で笑う。

「『晶露』!」

 一護が唱えると、縦に構えた晶露明夜の剣先からピンポン玉サイズの霊球がいくつも毀れて一護の掌に載る。

「⁉」

 一護は霊球に鬼道を籠めながら、次々と出現してくる虚に投げ付けていく。

「『旋風』!」

 投げ付けた霊球に向かって剣先を振ると、剣先から強風が吹き付け霊球が風でスピードを上げて虚にぶつかり、虚が燃え上がり消えていく。

「ったく。あんた莫迦だろう。」

 一護は投げ付けた霊球の先など見届けもせず、雨竜に振り向いて口を開く。

「いくら地区担当の死神がいるとはいえ、虚の異常発生に撒き餌が使われた事がばれないとでも思っているのか? 下手すりゃ撒き餌をバラ撒いた犯人を突き止められて処分対象にされるんだぞ。」
「僕が死神如きに劣るとでも?」
「……本気で言ってるみたいだな。」

 雨竜の眼を見つめ返した一護は溜息混じりに呟く。

「現世に派遣される死神は、霊的バランスを崩さない為に力が弱い。力のある者が派遣される場合は、力を弱める為の処置をして十分の一以下に力を抑えてあるんだ。死神の力を侮るんじゃねぇ。」
「どうだか。」

 聞く耳を持たない雨竜に溜息を吐くと、一護は空紋を見上げる。

「竜貴は姫が何とか出来るし、姫とチャドは浦原さんが回収してくれる事になってるし、夏梨と遊子だけ保護すりゃ良いか。」

 呟いた一護の声を拾って、雨竜は一護が友人達の霊力が増している事に気付いている事を知って驚く。感知力がないと思っていた一護が、自分の予想よりも遥かに感知力があると知った。
 雨竜の目の前で霊絡を視覚化させた一護が、妹達の霊絡を見つけてコンを伴ってそちらへ走って行く姿を目にして唇を噛むと、虚の滅却の為に走り出した。
 一方一護はコンを連れて走ると足手纏いだと判断する。

「コン、ルキアの居場所は判るか?」
「え……正確には判んねぇけど、方向なら……。」
「ならお前はルキアの元へ行け。浦原商店にいた筈だけど、これだけ虚が出現しているのに、のんびり話を続けてる筈もないからな。移動してるだろ。」
「判った。」

 コンが方向転換すると、一護は遊子のいる方へ足を向けた。
 途中で襲い掛かってくる虚を斬魄刀で始末しながら遊子の元へ辿り着いた一護は、晶露で作り出した霊球で遊子を包む。途端に遊子に集まり始めていた虚は目標を見失ったようにまごつき、方向を変えた。晶露が結界である事に気付いた一護は、自分の意志で結界内に取り込む事が出来るようになったのだ。
 手当たり次第に虚を始末しながら夏梨のいる方向を目指した一護は、夏梨のいる方へ茶渡が向かう感覚を覚え、急いで夏梨の元へ辿り着いた。茶渡が自分に襲い掛かってくる虚を引き寄せて空地へ向かっている先に、夏梨が友達とサッカーをしている姿があった。
 茶渡は、引き連れてきた虚の姿を正確には見えていないようだった。夏梨が指示を飛ばし、茶渡が避ける様子を見て手を出そうか迷った一護の視界の端で、虚の攻撃が夏梨の友人に向きそうになり、夏梨が飛び出す。アッと思った時には、茶渡の体から溢れた力が虚に向かって爆発していた。
 爆炎が晴れたそこには、右腕に鎧を纏った茶渡が立っていた。茶渡と夏梨の無事を見て取った一護は最後までは見届けずに踵を返した。
 確か公園に虚が集まり、そこで石田と力を合わせて戦った“記憶”がある。
 雨竜と協力出来るかどうかは判らないが、大虚が現世に足を着ける場所はそこだろう。
 急いだ一護は、自分が無意識に瞬歩を使っている事に気付いた。慌ててセーブして速く走っている状態まで力を落とす。そして、ハッと気付いて足を止めてがっかりしたように肩を落とす。またすぐに走り出し、公園を目指した。
 一護が公園に辿り着いた時には、空紋が益々広がり、大量の虚が収束してきていた。

「ああ、もう。こんなに虚が集まっちまったら大虚が引き寄せられちまうじゃんか。」
「大虚だとっ⁉」

 一護が口走った言葉に逸早く反応したのはルキアだった。

「あっ? ルキア、もうここに居たのか。コンは?」
「知らん。」
「何だ、未だ辿り着いてないのか。ま、いいけど。」

 会話の合間にも虚が収束していく気配が伝わってくる。
 雨竜が向かおうとするのを目にして、一護は襟首を掴んだ。

「無策で霊矢だけ撃ち続ける心算か?」
「僕が招いた事態だ。責任は取るさ。」
「いい心掛けだね。」

 一護はにやりとすると、駆け付けたコン共々ルキアを霊球に閉じ込めた。

「一護っ⁉ 何の真似だっ!」
「力が戻ってないんだろうが。そこで大人しく見てろ。」
「一護っ!」

 ルキアが反抗して霊球から出れば隠密機動の監視カメラに見つかる。出なければ今回は見つからない。
 一護は、ルキアの運命の選択肢を増やしただけで捻じ曲げる気はなかった。ルキアの運命を決めるのはルキア自身だ。

「多勢に無勢だ。こういう場合、敵の敵は味方の論理で動いても良いんじゃね? 背中合わせで戦えば効率が良いだろ。」
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙