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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「熟女アンドロイドの恋」 第十話

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エイブラハムは確信が持てなかった。
大統領は日本で何故内藤が危険な目に遭ったのか知っていた。きっとワシントンに居る自国の大使館員から報告があったのだろう。
それはエイブラハムと接触していた人物と関連がある。

「大統領にお願いがあります」

「何かね、言ってみたまえ」

「内藤さんを我が国に連れ出すことは出来ないでしょうか?」

「日本から出国させたいというのか?」

「はい、彼はデータを保存しているでしょうから、一からスタートさせるのだったら、ここでも構わないと考えたんです」

「なるほど。狙われることもないから研究に専念できる。そうできればよいが、日本政府と囚われているだろう組織の人間が解放するかが問題だな」

「それは確信があります。内藤さんが狙われている理由は彼の研究ではありません。ここに梓さんが居て、内藤さんが来られれば、彼らの危険は去ります」

「そういう事か。しかし、梓さんにとっても内藤さんにとっても念願を叶えるチャンスを失うぞ。それは納得できないだろう」

「命より大切なもの、守らなければならない大切な人を犠牲にしてまで梓さんも内藤さんも固執することだとは思いません」

エイブラハムはチラッと梓の方を見てそう言った。
大統領は梓に質問した。

「梓さんとやら、本名は何と言うのかな?」

「大統領、枇々木潤子と言います」

「では、枇々木さん、今エイブラハムが言ったことは間違いのないことになるのかな?
成し遂げたい思いを断念してまで内藤さんの研究に協力したいと考えておられるのか?」

「わたくしは、内藤さんの命が一番だと思っております。日本政府とグルになっている犯罪組織の連中たちを懲らしめたい気持ちは強いのですが、今はどうすることも出来ません。エイブラハムさまの言われる通りに従いたいと思っております」

梓は大統領の目をじっと見てそう答えた。