ベストパートナー
「でも、残念だわ。私の方もその日こっちに戻ってきて欲しかったのに…一緒にクリスマスを過ごしたかったわ。」
だが、続いて玲子はそう言った。何だ、勘違いか…俺はホッとして急激に体中の力が抜ける気がした。
「その日、佑太の生活発表会でもあるのか?」
それでも、玲子が俺に戻ってきて欲しいと思うのは、佑太がらみのことしか思い浮かばなかった。
「それは、2月よ。ミッション系の幼稚園が、そんな忙しい時期に発表会なんてしないわよ。」
だが、俺の質問に玲子は笑ってそう答えた。それから、おずおずと続けていった言葉に俺は驚いた。
「あのね、私…クリスチャンになろうと思うの。その洗礼式っていうのがその日曜日なのよ。」
なんてことだ、俺と同じ日に玲子も同じように受洗(洗礼を受けること)を考えていたなんて!
「あ…もしかして、こんなこと相談もなしに勝手に決めちゃっていけなかった?」
驚いて声も出なくなっている俺に、玲子は心配そうにそう尋ねた。
「あ、いや…そうじゃないんだ。実はな、俺がここに来て欲しかったのも、お前と同じなんだ。」
「同じって…」
同じと言われて玲子も驚いている。それはそうかもしれない。あいつは俺が教会に通っていることすら知らないのだから。
「最近、お前が変わった理由が知りたくて、俺も教会に行き始めて…イエス様を信じた。で、洗礼を受けるんだよ。」
「ホントに?!」
「ああ。」
電話口で玲子の鼻をすする音が聞こえた。
「…こんなに早くお祈りが聞かれるなんて…思わなかった。神様感謝します!」
そして、玲子は神に感謝の祈りを捧げた。
「ホントに…感謝だな。」
そんな涙声の玲子の祈りの言葉に、俺の目頭も熱くなった。
「それで、どうしようか…そう言うことなら俺の方をずらしてもらおうか?」
俺の提案に玲子はしばらくの沈黙の後こう言った。
「ううん、このままそれぞれの場所で信仰告白しようよ。私、教会の人にビデオを撮ってもらうから。でね…」
「それが終わったら、こっちに来て一緒に暮してくれないか。」
俺は玲子に言われる前に、言われるであろう言葉をひったくって言った。
「もう…それ私が言おうとしてたのに!そっちで一緒に住んでもいいかって。」
案の定玲子はそう返した。
「やっぱりな。」
「何がやっぱりなの?」
「同じタイミングで同じこと考えてる。」
「あ…」