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テケツのジョニー 7

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 「お隣に釘の先が出てて、着物を破いたりケガをしたりするといけないから」
と女房に言われ、粗忽な亭主は謝りに行きまが、最初に行った家がお向かいさんで、
「路地を乗り越えて来る釘なんてありませんよ」と言われやっと違うと気がつく始末。

女房に「落ち着けば一人前」と言われ、隣家へ行きますが、煙草を一服してから、
話出しましたが、釘の事はどこへやら、自分と女房の馴れ初めを惚気る始末です。
「いったい、あなた、家に何の用でいらしたんです」と聞かれて、ようやく用件を思い出します。

そして釘の事を話しますが、調べてもらうと、仏壇の阿弥陀様の頭の上に釘。
「お宅じゃ、ここに箒をかけますか?」と言ったりします。そして
「明日からここに箒を掛けに来なくちゃならない」
 などとおかしな事を言うので
「あなたはそんなにそそっかしくて、よく暮らしていけますね。ご家内は何人で?」
「へえ、女房と七十八になるおやじに、いけねえ、中気で寝てるんで……忘れてきた」
「親を忘れてくる人がありますか」
「いえ、酔っぱらうと、ときどき我を忘れます」
 とサゲる噺で、今の噺家の殆どは箒のところで切っている。神山さんに言わせると
「そっちの方がウケると言う考えなのだけれど、ちゃんと実力があれば我を忘れるの方がスッキリ落とせる。要は実力が無いんだよ」
 という事らしい。確かに柳生師は見事な高座でとてもネタおろしとは思えなかった。
 オイラを抱きながら神山さんは
「こいつが健在な限り伝統は守られるよ」
 そう言ってオイラの背中を優しく撫でたのだった。
作品名:テケツのジョニー 7 作家名:まんぼう