小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「サスペンス物語 大空に蘇る」 第一話

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「はい、計算上は800キロですが、空気の薄い高高度を飛べばもう少し出るかと推測します」

「ほう、早いですね。高高度とは1万メートル以上の事ですか?」

「はい、そうです」

「酸素マスクが要りますね」

「いえ、大丈夫です。完全な気密構造に作られているので、数時間は無酸素状態でも飛行可能です」

「素晴らしいです。これはもはやゼロ戦ではないですね」

操縦席にはエアコンも完備されていて、夏も涼しく、冬も寒くないベストな操縦環境が得られるようになっていた。
これで最新式の機関銃やミサイルが搭載されていれば、あの作戦で負けることは無かったと望月は過去に想いを馳っていた。

「望月様、では機体を1万メートルまで上昇させます」

そう言うと操縦桿を手前にぐっと引き、機体は大きく傾いた。さらに強くエンジン音が聞こえる。速度は800キロに達していた。
望月は感覚的に早いと感じた。

先ほどまで雲一つなく、風も微風であったが、高度を上げて飛行していると周りに雲がかかって来た。
横風に機体が少し揺られる。

「天候状態が良くないので、試験飛行を中止して帰還します」

「そうですね。無理はされない方が良いと思います」

大きく左に旋回して、高度を下げて行く。目の前にある真っ黒な雲に機体が吸い込まれてゆくように感じられた。
強く操縦桿を左に切るが舵が取れない状態になっていた。

「どうされましたか?」

望月は心配になって尋ねた。

「あの雲に吸い込まれてゆくような感じがします。操縦桿が・・・利かないんです」

「それは困りましたね」

機体が雲に吸い込まれてゆく。大きく左右に揺れて、エアースポットに入ったように垂直落下を始めた。
そして雲の外に出た。

「望月様、大丈夫でしたか?」

「はい、おかげさまで」

態勢を立て直して高度を下げて行く。
眼下の光景が目に入って望月はどこかで見たことがあるような錯覚を感じた。
それは72年前のあの時の見え方だったのだ。