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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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美しさをとどめていてほしい

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説得



 留美は医師との約束場所を地元にした。医師の名は谷崎淳。東京人である。留美自身がハンドルネームのキララと名乗っているので、谷崎の名を信じてはいなかったし、医師のことも信用はしなかったが、谷崎は医師免許をメールで送っていたから、信じたい気持ちが留美には強かった。留美自身は援助交際とはいえ、体を汚すことまでは考えてはいなかった。ペッテイングまでなら許せる範囲だと思っていた。何しろ、1対1の付き合いであるから、地元であれば助けを求めやすいと考えたのだ。
 近くまで来たと谷崎から電話が入った。約束の場所は、5月になると藤の花が咲く、広い公園であった。留美はその入り口で谷崎を待った。可愛らしいレトロな車が留美の前で止まった。
「キララさんですね」
「いい車。キララです」
「イメージどおり。素敵なお嬢さん」
「公園を歩きませんか」
「分かりました。駐車してきます」
 谷崎は3分ほどで戻ってきた。
「あの車は見たことありません」
「半分手作りらしいです。ビュートです」
「男の方には似合わない」
「デート用です」
「羨ましいな」
「それよりも聞きたいことある。いいかな」
「どうぞ」
「君お金に困っている」
留美は『君』と言われたことに敏感に反応した。年配者の言葉であった。同時に、やさしさも含んでいた。
「友達を助けたいのです」
「友達のためにお金がいるってこと」
「強姦に遭った友がいて、自殺を図り、同じ境遇になるからって、私が言ったの。どうしても助けたかったから・・・」
「そうか、君を一目見て分かった。援助交際するお嬢さんではないって、医大志望だから、お金目当てだったら、援助してもいいかなと・・」
「ごめんなさい。お願いもあります」
「どんなこと」
「買ったことにして欲しいのです」
「買ったこと?」
「体。17歳だから罪になります」
「私は医師ですよ。犯罪は犯せないでしょう」
「医師は命を守る。だから命を守って欲しい」
「変です」
「彼女も医師を目指しています。ですから立ち直って欲しい。新聞で報道されて私が、汚れた体になったことを知って欲しいの」
「友人が君のことをそんなことになって欲しいなど思ってはいない」
「でも、同じにならなければ説得できないわ」
「ぼくは医師免許をはく奪されるかもしれない。他のことを考えよう」
「報道されたらすぐ示談にするから免許は大丈夫よ」
「大胆なことをすぐには決断できないな」
「首に縄のかかっている人を抱いてやらなければ助からない。1秒も待てない判断です」
「君には完敗だ。君は美しすぎる。断れないな」
谷崎はそう言ってくれた。だから、留美は涙が出た。谷崎のやさしさ。留美はこんな男の人なら体を許しても後悔しないように思い始めた。