「サスペンス物語 悪魔の契約」 第一話
自殺の名所、富士山麓に広がる青木ヶ原樹海。
一人の若い女性がそこで命を絶とうとしていた。
「これこれ、こんなところで死のうとしておるのはなぜじゃ?」
夏なのに黒いコートを羽織った訝しい男がそう囁いた。
「ほっておいてください。あなたは誰ですか?」
「お節介妬きじゃ。どうせ死ぬのだろう、話を聞かせてくれ」
「私は男に生まれてきたかった・・・この身体が恨めしいので、死んで生まれ変わりたい」
「死んで生まれ変われるなどと言うことは無いぞ。よく見ると美人ではないか。命を粗末にするより、生きて人生を全うしろ。世の中には生きたくても天に呼ばれる人たちが大勢いるんだぞ」
「この身体を男に出来るのだったら生きていたいと思う。私の心は生まれたときからずっと男だった。両親や友達や世間に白い目で見られて、生きるのが嫌になった」
「そういうことか。ならば私がお前を男にしてやろう。嘘ではない。その代わり条件がある。それを呑めば、必ずかなえてやる」
「男になれる?どうやってするの?」
「魔法だ」
「ばかばかしい。この時代に魔法だなどと言うことが信じられない」
「ではこれを見ろ」
男はそう言うと、マントをはがしてからだを見せた。
そこには信じられないが、逞しい上半身の肉体と、自分と同じ女性の下半身が
備わっていた。
「あなたは何者?」
「悪魔の使いだ」
「悪魔・・・」
女は志奈(ゆきな)25歳、性同一性障害と呼ばれる症状に悩まされてきた。
死のうと考えたのはSNSで同じような悩みをツィートしている仲間が死を選んで実行したことからだった。
彼女の悲しみを救う方法が日本で見つけられない限り、自分もそのうち同じような感情が強くなり死を選ぶのだろうと思い始めた。
悪魔のささやきがもし本当なら自分は念願の男性として生きて行ける。
そして女性と恋をして、家庭を築き幸せに暮らせる夢が叶う。
「あなた言う条件とは何よ?」
一人の若い女性がそこで命を絶とうとしていた。
「これこれ、こんなところで死のうとしておるのはなぜじゃ?」
夏なのに黒いコートを羽織った訝しい男がそう囁いた。
「ほっておいてください。あなたは誰ですか?」
「お節介妬きじゃ。どうせ死ぬのだろう、話を聞かせてくれ」
「私は男に生まれてきたかった・・・この身体が恨めしいので、死んで生まれ変わりたい」
「死んで生まれ変われるなどと言うことは無いぞ。よく見ると美人ではないか。命を粗末にするより、生きて人生を全うしろ。世の中には生きたくても天に呼ばれる人たちが大勢いるんだぞ」
「この身体を男に出来るのだったら生きていたいと思う。私の心は生まれたときからずっと男だった。両親や友達や世間に白い目で見られて、生きるのが嫌になった」
「そういうことか。ならば私がお前を男にしてやろう。嘘ではない。その代わり条件がある。それを呑めば、必ずかなえてやる」
「男になれる?どうやってするの?」
「魔法だ」
「ばかばかしい。この時代に魔法だなどと言うことが信じられない」
「ではこれを見ろ」
男はそう言うと、マントをはがしてからだを見せた。
そこには信じられないが、逞しい上半身の肉体と、自分と同じ女性の下半身が
備わっていた。
「あなたは何者?」
「悪魔の使いだ」
「悪魔・・・」
女は志奈(ゆきな)25歳、性同一性障害と呼ばれる症状に悩まされてきた。
死のうと考えたのはSNSで同じような悩みをツィートしている仲間が死を選んで実行したことからだった。
彼女の悲しみを救う方法が日本で見つけられない限り、自分もそのうち同じような感情が強くなり死を選ぶのだろうと思い始めた。
悪魔のささやきがもし本当なら自分は念願の男性として生きて行ける。
そして女性と恋をして、家庭を築き幸せに暮らせる夢が叶う。
「あなた言う条件とは何よ?」
作品名:「サスペンス物語 悪魔の契約」 第一話 作家名:てっしゅう