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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 恩返し」 最終話

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「明治以降近代化されて、落人は過去の物語となり人権が尊重されるようになって、もう狐に姿を変える必要は無くなったのではないのですか?」

「狐に姿を変えた女は何故か普通の婚姻をしても子供が出来なかったのじゃ。一人一人とその子孫は減ってゆき、戦後間もない頃最後の一人が子供を産んでその後は話を聞いておらん。どこかに引っ越しをしてひっそりと生涯を閉じたと思っておったが、お前さんの話を聞いてまだ生きておると確信した」

「待ってください!私が知っている詩乃という女性は歳の頃なら三十前後で、戦後に生まれたというような年齢ではありませんよ」

「見てくれはそのように感じるのじゃ」

「実際もそうでした・・・」

「狐に姿を変えたあと、子供を宿すために若い女に戻る。お前さんまさか抱いたのではあるまいな?」

「言えずにいましたが、誘われて抱きました。彼女はボクが断ることは自分の恥になると言いました。その気持ちを思うと妻が居る身でありながら断ることは出来ませんでした」

「何ということを・・・それでは来年に子供が生まれるではないか。このような因縁めいたことは断ち切らねばならないのに、厄介なことをしてくれたのう」

「知らないこととはいえ今は恥ずかしいと感じています。詩乃さんを見つけ出すことは叶わないのでしょうか?」

「すでにこの村には住んでおらんだろう。人目につくことを嫌っておるだろうから、山へ帰っていったとおもわれるのう」

「こんな寒く食べ物もない山の中で暮らすことなど適いませんよ」

「狐として子を産むのじゃ。この時代残された方法はそれしかない。何らかの方法で狐として生きる方法を見つけない限り、詩乃という女が母親として生きることは叶わぬであろう」

数か月して村の役場に一匹の狐が捕縛された。すでにこと切れていたが、妊娠をしていて子供は動物病院で取り出すことに成功し、命を与えられた。
このニュースを東京で知り、隆はすぐさま村へ駆けつけた。

役場で頼み込んで生まれた狐を見せてもらった。
まだよちよちしていた子狐はメスで、隆の姿を見つけるとキキッと声を発した。
周りが驚く中で一人涙を流している村林を見て、感傷的な男だと捉えられていた。

少ししたら野生に返すと係り員に説明され、立派に成長してもう二度と女に姿を変えることが無いようにと、隆は心から祈っていた。