シャボン玉が浮いたようだった
バラの花だろうか
小さなふくらみ
そのまま
ふわりと浮かんでいけば
シャボン玉になりそうな丸みだ
夢で膨らんだシャボン玉
いつかは
弾けて消えていく
でも
記憶の中に残っている
黄色のバラの花
寒い雪の日だったと思う
君はコートを脱ぐと
黄色のセーターを着ていた
喫茶店の椅子に座ると
君が
シャボン玉のように感じた
壊れてしまいそうな夢が
隠されたような神秘さだった
コーヒーの香り
暖かな器のぬくもり
なぜか
会話が途切れてしまう
それでも
幸せを感じていた
不思議な時間であった
あの時の時間の流れは
とても遅くて
時が静止したようであった
それはきっと
シャボン玉の中に入り込んだ
君と僕の時間だからだろう
だから
流れていた軽音楽さえも
僕には聞こえなかった
あの時のシャボン玉は
弾けてしまったのだろうか
僕の夢の中には
小さなつぼみのまま今でも浮かんでいるのです
作品名:シャボン玉が浮いたようだった 作家名:吉葉ひろし