貝殻を創る
プラスチックが燃えるときに出る、鼻の通りをよくさせる刺激臭。それが充満する中で、純粋な木の焦げる匂いが鮮烈に伝わってくる様子を想像すると、何とも心躍るではないか。その中で悲痛を叫ぶのだ。車道の真ん中に走りだし、燃える服を着たまま走り回る。それを見た人々は火災の発生と事故の身の危険を察知し、一目散に火災現場から離れていく。残された私は消えることのない炎を熱く感じながらのた打ち回る。
骨の髄まで燃やすことはないだろう。頭蓋骨や、腕の太い骨だけが拾われ、私の家族か、どこかに届けられる。丁寧な箱に収められているだろうか。粗末な段ボール箱に詰められているかもしれない。
もし、そういう箱が送られてきたのなら、是非ともすりつぶしてほしい。ハンマーで砕き、破片を細かくなるまで丁寧にすりつぶし、砂のようになったのなら、小さな小瓶に詰めてほしい。そして、その小瓶をもって、関東の海ではなく、故郷の海でのない、どこか寂れた港から、海に撒いてほしいのだ。陸地から離れたところまで船で移動し、ばらまくなんて綺麗なことはしないでほしい。人工的な岸に打ち付ける白波の中にばらまいて、擦れ、さらに微細になった骨粉の行く先を見てほしいのだ。
骨の成分など詳しく知らない。しかし、どうもその色か、硬さか、そういうものから貝殻の成分と似たものに思えて仕方ないのだ。目に見えないほど微細に粉砕された骨粉が、海底に沈み、貝に食べられ、その貝殻の成分の一部になることを願う。そして、誰にも思い出されることなく、海辺で貝を拾う見知らぬ誰かや、ウミネコにだけ存在を微かに感じ取られるようになりたいのだ。