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独居時代(全10話)

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第5話 車内の風景



この頃、「餃子の王将」で餃子を食べず他のものを食べることに快感を覚えていた。アウトローってこんな心理なんだろうか。


東武東上線の車内で大学生くらいのちょっとチャラい若者が居眠りをしていた。

電車に揺られるうちにズルズル席からずり落ちて行き、最後は頭だけ座席の下部にもたれかかって、身体は完全に床に投げ出された状態に。それでも起きない。

すげぇ。

周りの人たちも呆れるを通り越して興味深々な目で観察。

なんでそこまで深く眠れるんだ車内で。

こんなにたくさんの目があるのに。
 
座席(の一番下の部分)にもたれ掛かる頭だけがピョコンと起きたようにして眠る若者を見て、コイツはきっと銃弾が飛び交う戦場でも同じように眠れるヤツだと妙に感心してしまった。

埼京線の車内では、長い棒にマイクをくくり付け、天井についている空調の音をずーっと録音している若者を見かけた。

まるで高枝切りばさみを振りかざす職人のごとく、電車の揺れにも微動だにせず録音しつづける若者。始発駅から俺が降車した駅まで約40分間、間違いなく全収録していた。微動だにせずだ。その後は知らぬ。

色々なマニアがいることはよくわかっているが、まさか空調の音マニアがいるとは…。

世の中は広い。まだまだ見るべきものがたくさんあるな。そう考えると生きて行くのがさらに1.3倍くらい楽しくなるような気がした。


作品名:独居時代(全10話) 作家名:排骨麺