独居時代(全10話)
第1話 はっきり言って
最近、若者のテレビ離れが激しいということだが、我々昭和生まれにとっては、何だかんだ言ってテレビがないと寂しいものである。
うちのプラズマテレビの調子が悪い。
電源を点けてもすぐ落ちる。
この症状をネットで色々調べてみたら、本体の熱を逃がすファンの部分に異常がある可能性が高そうだ。
そう思って本体を調べてみると、確かに3つあるうちの1つのファンが沈黙している。
自分なりに埃を取り除いてみたりしたけど駄目だ。
テレビが無いと落ち着かん。
せっかくの休日をこんな寂しい雰囲気で過ごせというのか。
9時になるのを待って早速メーカーのサポートセンターに電話だ。すると拙いイントネーションの自動音声が質問してきた。
「お問い合わせの商品名を洗濯機、エアコン、テレビ、電話機のようにお答えください。音声を識別して担当のサービスセンターにおつなぎします」
ほお、最近のサポート電話は凄いな。
音声認識とは恐れ入る。
はっきり言わないと困らせてしまうだろうと思い、できる限りクリアな音声でかつダンディに言ってやった。
「テ レ ビ」
「電話機ですね。かしこまりました」
おいこら。
なんの迷いもなくスピーディーに反応すんな。
ていうか電話機が故障してたらこの会話も成り立たないだろ。
しかもその後「電話機でよろしければハイ、そうでなければイイエとお答えください」というのでこれ以上ないくらいはっきりと「イイエ」と答えた。
「うまく認識ができませんでしたので、担当におつなぎします」
うは、大丈夫かコイツ。
しかもどこに繋ごうとしてんだよ。
仕方ないので電話を切ってもう一度最初からやり直し。我ながら最高級の発声を駆使し、苦労してなんとか「テレビ」を認識させた。
「テレビですね。担当におつなぎします」
やっとここまで行った…なんて手ごわいんだ…ハアハア。
ここでまたしばらく待たされる。
楽しそうな音楽が苛立ちに拍車をかける。
・・・・・・・
「申し訳ありません、只今電話が大変混み合っております。時間を開けておかけ直し下さい」
!!!!!!!!!!
さ い し ょ に 言 え
作品名:独居時代(全10話) 作家名:排骨麺