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第一回・怖いもの選手権顛末記

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 二週間後、お菊はコンテストが開催されるホールにいた。
 パフォーマンスの打ち合わせのためだ。
「舞台装置はどのように?」
「井戸さえあれば後は何も」
「照明はいかがいたしましょう?」
「やっぱり青白い光かしら……あ、そうそう、下から照らすのは止めてくださいね、青白い月明かりって感じで暗めで結構です」
「承知いたしました、効果音とBGMは?」
「あのドロドロって太鼓は止めてくださいな、効果音って言うかBGMって言うか、寂しげな横笛があればいいわ」
「なるほど、その方がお菊様には似合う気がいたしますね、ご自分を良く知っていらっしゃる」
「なにしろ二百年も幽霊やってますから」
 お菊はニッコリしたつもりだったが、担当者はその表情を見て震え上がった、美人なだけに、青白い顔で微笑まれると余計に怖い。
「コンテストには何人位出場するんですか?」
「お菊様を含めて十三組でございます」
「『組』?」
「はい、幽霊様はともかく、妖怪様の中には複数存在されていらっしゃる方々もありますので、それとコラボでご出演いただけるユニットも」
「はぁ……あたしと同じ幽霊は?」
「はい、子育て幽霊様、お岩様とお菊様のお三方です、もっとも、幽霊とも妖怪とも区別が付き難い方もいらっしゃいますが」
「案外少ないんですね、牡丹灯篭のお露さんは?」
「はい、オファーは出させて頂きましたが、なんでも新しい恋にお忙しいとかで」
「お露さんの男好きは何百年経っても変わらないのね……」
「お打ち合わせは以上で?」
「ええ」
「確認します、舞台装置は井戸だけ、照明は月明かりをイメージした青白くてほの暗いもの、BGM兼効果音として悲しげな横笛の音、以上でよろしいでしょうか?」
「はい、それで」
「こちらからのご提案になりますが、舞台装置に柳の木はいかがでしょう?」
「ああ、いいわね、それも追加でお願いいたします」
「ではそのように……当日のお越しをお待ちしております」