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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 身代わりの愛」 第一話

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645年、乙巳の変(いっしのへん)と呼ばれるクーデターが奈良の都で起こった。
中臣家の策士、鎌足(かまたり)にそそのかされて、ときの天皇の息子だった中大兄皇子(なかのおおえのみこ)はその計画を周到に実行した。

飛鳥板蓋宮(あすかいたぶきのみや)において、朝貢使節の応対中に当時権力を誇っていた蘇我入鹿(そがのいるか)を宮中で襲い、首を撥ねて殺害した。

「皇子、やりましたな。これであなた様の時代になります。これからのことはこの鎌足が悪いようにはしませんのでお任せいただきたい」

向かい合っている相手は中大兄皇子。

「鎌足、おれは即位するのか?」

「いえ、いましばらくはお待ちください。私の息のかかったものを集めて周辺を固め、万が一にも反乱分子の刃にかからないようにしないといけません。まずは母上様の皇極(こうぎょく)天皇をそのままに、次におじ上様の軽皇子(かるのみこ)さまに皇位をお譲りし様子を伺いましょう」

「軽皇子さまに?あの人に務まるのか?」

「政務は私共が執るのでご心配には及びません」

「そうか、そなたに任せればすべてうまくゆくというのだな?」

「仰せの通りでございます」

自分の目の前で信頼関係が強かった入鹿を殺された皇極天皇は宮中で息子の中大兄を激しく責めた。

「そなたは何ということをしてくれたのじゃ!入鹿殿に何の咎あろうか、申してみよ」

「母上、鞍作(くらさく)殿は古人大兄(ふるひとのおおえ)を皇位につけようと策略し、太子の皇子である山背(やましろ)君を亡きものした張本人です。自ら甘樫丘(あまかしのおか)に宮中と同じような館を作り、母上を操ろうとしていたのですよ。それとも母上に何か後ろめたいことでもおありなのですか?」

「山背殿は謀反をたくらんだとのこと。太子の功績を盾に奔放な振る舞いをしていたと聞きます。後ろめたいこととは何をして言うのか?」

「私は知っておりますよ、母上。鞍作殿と母上の関係を」

(鞍作殿とは蘇我入鹿の呼び名であり、太子とは聖徳太子をさす)

「入鹿殿とはそのようなことになろうはずがない。わたくしはいやしくも天皇ですよ。重臣とはいえ皇族ではない男と関係を結ぶなどということは恥ずべきことです」

「ならばよろしい。今となってはその真意も聞けませぬから、母上が知らぬと申されるのならそれまでです。事は起こってしまいました。これからはわたくしと鎌足の言いつけを守られて政務を執られますようにご注進申し上げます」

「何を偉そうにものを申すのじゃ。わらわは弟の軽に皇位を譲って隠居する。そうみなに触れを出されませい」