狗賓の落書(二百文字SS集)
妻
単身赴任中の俺のアパートにとつぜん妻がやってきて部屋のなかを掃除し始めた。ははあ、さては浮気していないか様子を見にに来たなとニヤニヤしていると、洗濯物をたたみ一人ぶんの食事を用意するなり、すぐに帰ってしまった。
去りぎわ俺のほうを振り返って「じゃあね」と微笑んだ。
結局あいつ、なにしに来たんだ?
しばらくすると警察から電話がかかってきた。
今朝がた列車事故があり、巻き込まれた乗客の中に妻がいたというのだ。
作品名:狗賓の落書(二百文字SS集) 作家名:Joe le 卓司