「月ヶ瀬」 第十五話
「ええ?それはきつい言い方やなあ~まあ、村一番の金持ちやし、村長もやった人やさかいに、奥さんは若い時は地元でも一二の美人やった。会田がどうして近づけたんか分からへんけど、仲良くしてたんやったらわたしと疎遠になったことは納得できるわ」
「なかなか、清一と言い会田と言い、月ヶ瀬には悪いやつが多いなあ~」
「刑事さん、二人だけやないの。そんな言い方あかんわ」
「そやな、悪かった。紀美子さん、どない思う?会田はどこに居るんやろ。それに旦那の高木も」
「旅館に居らへんと言うのやったら、居酒屋の二階か、全然違う場所かやね。よその土地へ行くと目立つから月ヶ瀬の中に居ると思うんやけど・・・」
「居酒屋の二階か・・・あそこは前に調べたから今回は手薄にしたな。雇われのママも知らへんことかもしれんから、明日の朝調べに行くわ。今日はほんまにおおきにな。また来るかもしれへんけど、嫌な顔せんと話してな」
「刑事さん、お友達が元気で見つかることを祈ってますわ。いつでもええですよ、連絡してください」
佐藤は紀美子に聞かされた内容を整理して、一つのストーリーを描いていた。
山崎弁護士が事故を装って怪我させられたことを会田が知って、清一はゆすられていた。多分関係のあった清一の妻から会田は聞かされたのだろう。困っていたことを高木に話していた。そしていつか会田を始末したいと考えていたとしたら・・・和田は清一を車の買い替えやそのほかの状況から問い質したとする。
前もって和田が何かを調べに来たことを会田から聞かされていた清一は、もし、事故のことが公になったら自分の立場が悪くなることと、村での一番の信用が消えることを恐れて、会田に和田を始末するように頼んだとして、そのあとに完全に証拠を消すために、高木に会田を始末するように頼んだ。
おそらく高木はお金を貰って、やることやって遠くへ逃げたと推測した。
最悪の事態が予測されるが、和田と会田の遺体が見つからない限り、これは推測の域を出ない。
佐藤はもう一人行方が分からない清一の妻も高木か清一に殺されている可能性があると考えた。会田と妻が出来ていれば、その不始末も清一には妻を殺す理由になる。
生きて隠れているのは、清一と高木だけという最悪の事態が頭をかすめた。
作品名:「月ヶ瀬」 第十五話 作家名:てっしゅう