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偽物の神様に祈る人々

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偽物の神様に祈る人々




 会社で無茶苦茶上司に怒られた。
 腹が立ったので、近所の公園で拾った掌ぐらいの石を会社のデスクに飾って、


 「ザイレドオキシ神様、私をお助け下さい」


 だなんて、ちょっと頭が可笑しくなったフリをしてみた。
 そうしたら次の日、上司が熱を出して一週間寝込んでしまった。

 ちょっと調子に乗って、ことあるごとに石に祈るフリをしてみた。
 成功不可能と言われたプロジェクトの成功に、受付のユミちゃんとの交際やら何やら。
 そうしたら、プロジェクトは見事成功をおさめて、ユミちゃんからも告白されてしまった。
 石のおかげとは思わなかった。
 だって、公園で拾ったただの石だし。

 昨日、こっそり石に祈ってる奴を発見してしまった。
 次第に祈る奴が一人二人と増えていって、俺に石を売ってくれと言う奴まで現れる始末。
 出された額に正直俺は目を向いた。
 ただの石に云百万出すなんて狂気の沙汰だ。
 流石に人間の良心がうずいたので売らなかったが、その代わりそいつは毎朝俺のデスクの前で長々と祈りを捧げるようになった。

 この間、とうとう社長まで石に祈っている姿を発見してしまった。
 そうしたら、ライバル会社がバタバタと潰れてしまって、奇跡かっていうぐらいに会社の株価があがってしまった。

 とうとう石が会社の玄関に飾られることになった。
 防弾ガラスのショーケースに飾られた石を見る度に、随分と出世したもんだなと思う。
 適当に付けた「ザイレドオキシ神」という名前も、今は気安く呼ぶことはできない。

 会社がおかしくなった。
 ただのお菓子メーカーだったはずなのに、社名がいつの間にか「ザイレドオキシ神 信仰教会」に変わっていた。
 怪しい臭いがぷんぷんする。
 怖すぎる。

 俺は出世するらしい。
 肩書きは教祖様。
 確か昨日までは係長だった気がするんだけど。
 教祖様と平伏す社長の姿を見ながら、俺は苦笑いが溢れて来るのを感じた。

 そんなこんなで今は信者五千名を抱える新興宗教の教祖様です。
 今更ただの石だなんて言えないよなあ。
作品名:偽物の神様に祈る人々 作家名:耳子