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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅸ

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 近隣の某大国が政情不安に陥ったのを受けて情報局内が慌ただしくなったのは、夏の終わり頃だった。その当時、某大国を所掌する第4部との連絡調整を担当していた小坂3等海佐は、当該事案に限り、すべての地域担当部との連携を図るまとめ役をも担っていた。しかし、さほど大事にはならずに、事態は一か月ほどで終息している。当の小坂も、大役から解放されてすでに久しい。
「小坂3佐、だっけ? あの人、普段は4部だけ見てるんでしょ? 何でまだうちのトコに出没するわけ?」
「そうなんですか? 今は、8部の所掌はすべて片桐1尉の担当に戻っているはずなんですけど……」
 大須賀と一緒に美紗が怪訝そうに首をかしげると、傍にいたパンツスーツの女が目を細めて忍び笑いをした。
「大須賀さん見るのが目的なんじゃない? 前に食事に誘ってきたのって、その人なんでしょ?」
「でもアタシ、その時ちゃんと言ったんだよお。『アンタ好みじゃない』って」
「面と向かって、はっきり?」
「うん」
 大須賀がふざけて威張ったポーズを取ると、ボタンを閉めた上着から豊かな胸がはみ出しそうになった。
「大須賀さんの好みって、どんな人なの?」
「アタシの好みぃ? それはねえ、もうねえ、1部長の日垣1佐!」
 スーツと同じ紅い色をした口が、嬉しそうに横に広がる。
「1部長……って。まあ、確かにね、カッコイイかもしれないけど。でも、1佐じゃ四十過ぎてない? おじさんじゃん」
「オトコは若さじゃない! シブさよ、シブさ!」
「マジでー? 信じらんない!」
 遠慮なく笑う同僚に、大須賀は口を尖らせて食ってかかった。美紗は、騒々しくオトコ談義を始めた二人の目につかないように、そっと更衣室から退散した。