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われら男だ、飛び出せ! おっさん(最終話)

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「師匠、優勝の報告が出来なくてすみません」
 横浜に戻った三人は、まず師匠の元へ大会の報告をしに向かった。
「なに言ってんだ、全国三位だぞ、それも僅差だったそうじゃないか、胸を張れ、胸を」
「ええ、当然悔しさはありますが、全然気落ちはしてません、結果はともあれ、高校時代からの夢だった全国大会で存分に戦えて満足してます」
「まったくなぁ、それぞれ立派な仕事持ってたのに定年間近になって『弟子にして下さい』 と言われた時は面食らったよ、あの時はまだ素人だったのに、三年でここまで来るとはなぁ、師匠としても鼻が高いよ……ところで来年はどうする?」
「来年……って、ラーメン甲子園は開店三年以内の店限定じゃなかったんですか?」
「基準日が一月一日なんだよ、お前達は正月明けの開店だったからもう一回出ようとすれば出られるぜ」
「本当ですか?」
「嘘言っても始まらないだろう? 出る出ないは自由だけどな」
「出るに決まってるじゃないですか」
「当然出ますよ、まだ頂点に立ってないんですから」
「今度こそ優勝して見せますよ」
「そう言うと思ったよ、スケジュールは今年と大体一緒だ、三月にラーメンスタジアム横浜、場所は今年と同じ、ラーメン甲子園は東京だ……」


 一年後、『中華そばや』は第二回ラーメン甲子園で見事頂点に立ち、その結果を受けて倍増したお客に対応するために横浜に店舗を構えた。


「ダメだダメだ、もっと気合を入れてこねないか、麺は気合を練りこむつもりで打て」
「わかったよ、敵わねぇなぁ、全く……」
 厨房には優作の息子、健一の姿が……父の跡を継ぐべく修行中だ。
 その他にも熱意のある若者が二人、厨房で修行中だ。
 そして客席で愛嬌を振りまきながらもてきぱきと動き回っているのは和歌子と梨絵。
 ただし、人妻の和歌子はもちろん、梨絵にも粉をかけるのはご法度、厨房には柔道四段のカレシ、健一がいるからだ。
 そして、麻里は相変わらず剣道部顧問を続け、時折生徒を大勢引き連れてやって来るし、自分の美容室を持つ夢が叶ったみどりもスタッフを連れて来る。
 もちろん、今はアンテナショップの店長となった佑子もショップスタッフまるごとの常連だし、神奈川県警の剣士達も三日にあけずやってくる。


「おい、聞いたか?」
「あれか?」
「知ってるよ『ラーメン日本シリーズ』だろう?」
『ラーメン日本シリーズ』……『ラーメン甲子園』は開店三年以内の新進店が対象だったが、今度は参加資格フリーの大会が開かれることになったのだ。

「やるか?」
「やるとも」
「当たり前だろう?」
「新しい味にも挑戦してみないか?」
「望む所だ」
「今度はどんなラーメンを追い求めようか」
「決まってるじゃないか」
「そうだな……」
「「「日本一のラーメンだ」」」

 閉店後の店内でテーブルを囲む優作、佳範、秀俊の三人。
 彼らはいつまでも『男』、いや『漢』であり続けるに違いない。
 この世に生ある限り……。


(完)