星の彼方
あなたをのせて消えてった
「宇宙の彼方ってどんなかな」
私は彼に言った。
「星の彼方なら知ってる」
彼はしれっとそう言った。
「なにそれ!そんなん聞いたことないよ~」
彼はぶすっとした声で言った。
「本当だよ。だって俺行ったことあるもん!」
「えー、いつ?」
彼は普段とても冗談を言うようなタイプではないので、私は笑いをこらえながら聞いてみた。
「ってもちっさい頃にみた夢なんだけどさ…」
彼はゆっくりと馬鹿真面目に話し始めた…
七才の頃だったかな、
俺は泳いでた。
海?いいや、そこは空だった。後にも先にも出て来なかったのに、俺はなぜか自分が星からおっこちて親からはぐれてしまったってことがわかってた。
俺はだんだん心細くなってきたんだ。暗くて、寒くてさ…
そしたら綺麗なフルートの音が聞こえてきた。
細くて、美しい音色の…
気付くと女の子が前にいた。小さな星に座って…。可愛いフルートを白い手に持って。
「サムス」
俺の名を呼んだ。
「泣かないでサムス」
そのこは月みたいな金髪の女の子だった。
そう…君みたいな。
「おいでサムス」
彼女はゆっくりと僕の手を掴んだ。
そしてその小さな星にぐんぐんと突っ込んで行く。
…静寂だった。
ただひとつだけ、話すようなフルートの音が聞こえた。
サムスサムス
あなたをここに預けるわ
いつか大きくなる日まで
いつか思い出すときがくる
サムス
あなたの星はここよ…
って…
「…それでおしまい。僕は目が覚めた!」
「…ふーん。…で、あなたはずっとその夢を今まで覚えてたの?」
「いいや」
彼は寂しそうな顔をして言った。
「たった今さ」
そのとたん、彼の体が光り始めた。
きらきら、きらきら…
そう、まるで小さな星のように。
「…サムス?」
「サムス!サムス!」
…目の前にはただ暗闇しか残っていなかった。
ただ、彼がさっきまでいたはずの真上に、小さな星ひとつ…
遠くからフルートの音が聞こえる。
あれは歌を歌っているのだ。
愛してるよ
愛してる
君をこの空から
星から見てる
ずっと
ずっと
いつまでも…