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遅刻の罰に(掌編集~今月のイラスト~)

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「ごめ~ん、待った?」
 彼女が待ち合わせに少し遅れて来るのは珍しいことではない、もっとも、大抵は5分か10分、彼女にぞっこん惚れ込んでいる僕としては余裕で許容範囲内だ。
 それどころか、こんな仕草や表情にはいつだってハートを撃ち抜かれちまう。

「髪留めの色がなかなか決まらなくて」

 鏡に向かって何度も髪留めをつけたり外したりしている姿が目に浮かぶ、大方、コートの襟と同じ赤にするか、それとも対比させて青にするか迷ったんだろう。
 それだけ僕とのデートを楽しみにしていてくれる証だと思えば5分や10分の遅刻なんて…今日は少し長くて30分待たされたが、それくらいは全然OKさ。

「何でも言う事聞くから、ね?ね?」

 大幅に遅刻した、という負い目があるのだろう、今日は拝み方が念入りだ、そしていつもなら僕も『気にしないで良いよ』と軽く返すところだが今日はちょっと別、彼女の方からチャンスをくれたようなものだから…。

「本当に何でも言うこと聞いてくれる?」
「ホント、何でも聞くから」
「マジで?」
「うん、マジで」
「じゃ、食事は後にして僕の買い物に付き合ってよ」
「え~? おなかぺこぺこなんだけど」
「何でも言うこと聞いてくれるんじゃなかったっけ?」
「えへへ、確かにそう言った、で? 買い物って何? あたしは何かお手伝いできるの?」
「君がいなくちゃだめなんだよ」
「そうなの? どうして?」
「君の左手の薬指のサイズ、それを僕は知らないからさ」