ナルの夏休み エピソード0-0
7月と8月に山奥に入りサバイバルキャンプを2ヶ月受ける。限られた資材で魚をとり飢えをしのぐ。それに、わざと一人だけ性格が優しいけど、頭が弱そうな子、力が弱そうな子も参加させる。そのような特別な子にどんなしうちをするか、衛星から、密かに隠している監視カメラで観察する。
いじめをすれば、そのまま中東へ送られる。強制的に環境が劣悪なところへ永住を命じられる。
性格が悪い人間は悪いことをすれば強烈な快感を得る。脳内に麻薬の1万倍もする強烈な薬品が作れる。生きたまま脳を摘出される。本人は自分が死んだことに気がつかない。摘出された脳から、生前の記録をコンピューターに記録する。無数の思い出がコンピューターの記録装置に入力される。
「戸松さんは知らないほうがいいことがたくさんあるわ。このあいだのようにトラウマになる危険性があるから。戸松さんの人格だと、とてもデリケートだから」
「そうなの。ときには知らないということも重要だわ。だって、今の時代は、情報量が多すぎる。だから、すぐに忘れるようにできてしまって」
「でも、大人になるともっと忘れるようになるわ」
彼女は、高校を卒業したら一生永住してボランティアを受けるのか。それは、とても悲惨な状況の人たちを助けたいだけ。
人間の脳は、いろんな成分の麻薬が作れる。それも高密度で大量に作れる。
犯罪を起こしてた直後、頭をメスで切りつけると、頭から噴水のように幸福物質が吹き出す。
人間は常に生きる活力が必要である。それが、足りないと、重度のうつ病になる。パーキンソン病という病気になり自分の体が思うように動かせなくなる。
国道16号通りにモスクがある。肌を露出してはいけない。中東と北アフリカでは、宗教法によりイスラム教以外の宗教を信仰してはいけない。クラスメイトの女の子は、将来、イスラムに改宗して北アフリカで一生ボランティアをする。貧しい子供たちのために、文字を教えたり算数を教える。食事なども提供する。
「ねえ、ちゃんと髪の毛を隠して。スカーフを深くかぶって」
「はい」
「でも、あとで後悔するかもしれないわ。永住することになるわ」
「そうかも。でも、どんなにつらくても神様がついているから」
「ご両親はどう思っているの」
「反対している。まだ12だし、でも、考える期間は、まだ6年もある。それから、私もカムチャッカ半島の石器時代サバイバル訓練に参加するわ」
「やめて。とても辛いと思う。もう少したってもいいじゃない。まだ12歳の女の子には無理だわ。命を落とすかも」
私はコンタクトレンズ状のコンピューターを目に装着した。
目をつぶると、殺される人の瞬間の映像が立体的に見える。でも、痛みは感じない。恐怖もない。それは、私の脳は電脳化していないから。
「なんなの。この映像は。うす暗い」
それから、臨死体験の映像が見える。思い出が走馬灯のように駆け巡る。そして、親族も迎えに来ていない。うす暗い霧に包まれている。両側に大きな崖がある。ひじょうに深い谷を歩く。うす暗い。電気がない夜のような暗さ。
そこを歩き続ける。霧がある。私は不気味な気持ちを感じる。そして、はるか向こうに川がある。船をひとりで乗る。川を渡る。そして、私の映像がとぎれた。真っ暗になった。
「これが悪いことした人の臨死体験なの」
「そうなの。とても孤独で暗いの」
「きれいなお花畑があると思ったのに」
「そうね、彼は地獄に落ちたと思う」
「そう」
「ねえ、こうやってネット回線で自由に人間の心の中の映像、それに人それぞれの記憶をみることはプライバシーの侵害じゃないの」
「でも、これらは中東にあるクラウドビルからコピーしたものなの。数千万人分の脳内の記憶が保管されているの。なんで、あの人が悪に染まったのか、研究するために、全ての人にオープンしたの」
「ねえ、そんなことしたら、みんな悪人の記憶に影響されるわ。性格がわるくなるわ」
「でも、それを未然に阻止するために、悪人の思考を研究している。ある程度パタンが決まっている。大人になれば、次の行動が誰でも予測できるようになるの」
「じゃあ、あの関東女学院の南さんも、誰が何を言うか次の行動も予測できるのね。まるで予知能力だわ」
「でも、人間の心はランダムだから、予知というのは変だわ。予測するが正解」
私たちの行動は、監視されているだけではなく、次の行動が予測されている。この日本列島で犯罪るす直前に警察につかまる。
そして薬品を飲むことで、聖書の言葉が全部暗記できる。
旧約聖書も人間の記憶にそのまま保存できる。
作品名:ナルの夏休み エピソード0-0 作家名:こーぎープリッド