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はちみつとみつばち

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青い空に蜜蜂が一匹飛んでいる。
これは花畑の風景でもなく、川辺に置かれたままの水彩画でもない。一二センチの円盤型に切り取られた青い風景に蜜蜂がいるのだ。
 その蜜蜂はやけに立体的であった。彼が持つ微細な毛や黒と黄色の重なりは絵具で表現されたものとは思えなかった。
 さらにその足。円盤から浮き立つように伸びるそれは不自然な立体をしている。パッケージを開いたときに微かに広がった腐乱臭を思い出し、この蜜蜂が本物の死体だと分かった。蜜蜂から漏れ出た体液が青い円盤をほんの少し蜂蜜色に濁らせている。  
 蜜蜂には毒がある。手で触るのは賢明ではない。割り箸でゆっくり半立体な死体をつまむと羽が円盤に張り付き剥がれ落ちた。
 円盤の汚れをふき取り、割らないようにトレイから外す。青空が撓るように曲がるが、雲はできない。もちろん雨も降らない。
 外したトレイ側にも蜜蜂の体液のようなものがあった。円盤を透過するほどの濃度だったのかと思っていると裏側から小さな蜜蜂がトレイに落ちた。渦巻く虹色にも空と同じ濁りがあり、それを無表情でふき取り、プレイヤーにセットする。
 五十インチのテレビでは戦闘機のような飛行機が飛んでいる。雲の上を音速で飛ぶ最新型がくっきりと映像に残るはずがなく、合成映像だということがひしひしと伝わってくる。
 飛行機が空母に着艦しようと高度を落とし始めた時、突然映像が乱れ始め、赤や青の点線が画面いっぱいに広がった。戦闘機と空の映像はどこへ行ったのか、赤と青の点線はウイルスの拡大図のような静止画に変わっている。画面に張り付き離れない静止画に蜜蜂の姿はない。しばらくすると空の青色が再現されていき、数分後には元の戦闘機の映像が流れていた。
 蜜蜂が二匹、半立体で息をしていない。
 私が一人、硬直状態で息をしている。
作品名:はちみつとみつばち 作家名:晴(ハル)