10数通の。
刑事の相賀は、尋ねた。
目を上げずに上司の蒲生が答える。
「これらは…偽造じゃないのか?」
「消印の押された封筒だけなら…可能かも知れません」
「…」
「しかし、中身に関しては…」
捜査課の机の上に積まれていたのは10数通の封筒。
その中には、過去の大量殺人事件の詳細を記した文書が入っていた。
消印の日付を信じるなら、それらは事件発生の数日前に 書かれていた事になる。
立っていた相賀は、背中の後ろで手を組んだ。
「マスコミ発表された内容だけなら、でっち上げも可能でしょうが…」
「公表されていない情報も、書かれていたと」
「中には、捜査機関にさえ知られていない情報も 含まれていました」
「─ 確認、してみたのか?」
「調査の結果…全て事実でした」
顔を上げた蒲生が相賀の目を見る。
「これが13年に渡って…宇佐美の所に、送られて来たと言う事か」
頷く相賀。
「封筒には、差出人の住所も名前もありません」
「消印の郵便局名も、全てバラバラの様だな」
「…いつからか宇佐美は、事前に行われると判っている大量事件を止めない自分に、罪悪感を持ち始めた様です」
「それで、今回始めて…大量殺人を行うであろう人間を殺したと」
腕を組んだ蒲生の身体が、椅子の背にもたれ掛かる。
「殺された男の家宅捜索の結果は?」
「大量の毒物を発見しました」
「宇佐美が受け取った封書に書かれた内容と、一致している訳だ」
「もしあの男が生きていれば…」
蒲生は目を閉じた。
「大量殺人は、行われていない。」
「お…仰る通りですが」
「警察官たる我々の仕事は、罪を犯した人間を 法に則って扱う事ではないのか?」
「─」
「それ以外に、何が出来ると言うのだ。。。」