新・覇王伝__蒼剣の舞い2【第1話】
第1話 四獣聖、見参!
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____見ツケタ…。遂二、願イガ叶ウ。覇王ガ生マレル。
それは長い道のり。ずっと探していたのだ、ずっと。
三百年の思いを込め、それは蘇る。それなのに、どうしてアレはないのか。やっとこの思いが叶う時が来たと云うのに、何故。
蒼い光の帯が、漆黒の闇の中で蠢く。戸惑いに揺れながら、ただ待つしかできぬ。
____アレハ、何処ニアル?
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七年前、嘗て前覇王が蒼龍王と名乗って統治した東領にその国は建国された。山一つ隔てる北の黒抄国に半分の領土を佚し、現在(いま)は他三国に比べれて小さな国。
問題は、誰がこの国を治めるのか。
黒抄の脅威から守れる強き王。それは誰か。
そんな時に、四獣聖・玄武が突然ある男を指名した。男の名を、清雅・リョウ・ウォン。自由戦士上がりの四獣聖・蒼龍。
「お久しぶりです、清雅さま」
父子ほどの年下の清雅に、男は深く頭を下げた。
「あんたが戻ってきてるとは思わなかったぜ、狼靖」
「吾を恨んでいますか?」
「七年前、あんたがとんでもねぇ事をいった為に俺は身動きできやしねぇ」
_____貴方は、前覇王陛下の血を引いておられます。
七年前、狼靖はそう云ったのだ。
清雅の母・桜はごく普通の平民女性であり、狼靖の妹でもあった。妹が覇王の子を産んだと知ったのは、桜の死の一月前。蒼龍王の名乗っていた時に二人は知り合い、結ばれたのだと桜は証した。
「___でも、兄さん。私は清雅を覇王家とは関係なく育てます。ごく普通の人間として、剣など無用な人間に」
桜の願い通り、狼靖もその方がいいと思った。当時の覇王家は、以前とは違い崩壊しつつある。せめて彼だけは___叔父として、桜の兄として狼靖は覇王争いとは無縁の世界で生きて欲しいと願った。
だが、桜の願いはその死と共に清雅を戦場に向かわせ、結局は前覇王の血が彼を四獣聖・蒼龍とし、蒼王へ導いた。
「本当は、大人しく北領に籠もっているつもりでした。覇王陛下が亡くなり、四獣聖・玄武としての役目は終わったと」
「また、面倒を持ち込もうってんじゃないんだろうな?」
長い髪を掻き上げながら、清雅は嫌な顔をした。彼は、子供の時から妙に勘が良かった。お陰で命の危険に晒されながらも回避する事ができた。
作品名:新・覇王伝__蒼剣の舞い2【第1話】 作家名:斑鳩青藍