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昨日の話

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よく通る道端の脇に、草が茂っているのだが、普段はそんなもの気にしないし、他の人もそ
んな感じである。
ただ昨日は、偶然そこに目がいったのである。なぜかというと、ベニシジミ
というオレンジ色がある美しい蝶が翅を休めていたからである。
久々に見たので、思わず見入
ってしまった。しかしよく見ると、葉の裏や茎に、ヨコバイという虫が休憩していた。この虫
の色を単色で見ていけば嫌いではないが、各々の色の組み合わせ、そしてフォルムを見れば、
距離を置きたくなると感じざるをえない。
そしてさらに、少し離れたところに目を向けると、
巣を張る蜘蛛がいた。この蜘蛛という虫は、昔から大嫌いで、特にこのタイプは無理なのであ
る。どうしても。
そこで、私はその場を去った。
だがすぐに、ベニシジミをもう一度見ておこ
うと思った。ふいに。
偶然まだいたので、見るだけじゃ勿体無いと思い、その翅をつまんだ。

蝶は暴れるが、その構造上、さほど暴れているようには見えない。

 しかし確かに暴れているので、かわいそうだと感じたのでリリースしてやろうと元の位置
に止まらせようと思った。
しかし、そこは蜘蛛に襲われる危険地帯であることに気づき、3
メートルほど離れた場所にとめてあげた。
だが私の意思を解せぬ蝶は、すぐに飛び去ってし
まった。まったく。しかしそれで良いと思った。より遠くに行けばその蜘蛛から遠ざかれる
から。
私は安心して、また歩き始めた。

 それから数十メートル程歩いたとき、ふと心配事が湧き起こった。
 
蜘蛛は至るところにいる。その蝶が飛翔しながら逃避している最中、気づかず別の蜘蛛の
巣に捕らえられてしまったら、と。
 そのとき、私は複雑な気分になった。助けたつもりなのに、それが本当に助けたことにな
ったのか、と。そして、ヨコバイは見苦しい姿だから助けなかったのだが、見た目のみで判
断した自分の愚かさに罪の意識がよぎった。だがもし助けたとしても、同様の問題が発生す
る。
しかも、この上なく見苦しい蜘蛛も、彼らがいなければ、死ぬ。

 
 そういうことを考ながら歩いていたら、もう自転車を停めてあった駐輪場に着いていた。
 なおも、複雑な気分のまま、自転車で帰宅した。




 そして今日、別の思いに至った。
それは、
「もうそんなこと気にしなくていい」というものである。
作品名:昨日の話 作家名:島尾