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三次 虎雄
三次 虎雄
novelistID. 63443
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冬に散ったある青年の花

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 そして、もう一度2年前の自殺現場に向かい管理人室へ伺い聞き込みを行った。当時のことは、完全に自殺と判断がすぐに下されていたので管理人は、少し動揺していた。そして、話をしていくとこの秋葉原の高層ビルの屋上へ行くには、2通りありエレベーターで最上階20階へあがりそこからの階段で行く方法と非常階段で20階まで上がっていく方法であった。非常階段であがることは、かなり考えられないので、エレベーターで当日上へ向かったはずとなり、当日のエレベーターの中のモニターを預かりたいと江草刑事は、伝えた。当日のモニターは、遠隔操作のエレベーター会社が管理しており、依頼して警視庁へ送付すると管理人は言ってくれた。
また、事件当日は特に変わったことはなかったし、当時のテナントリストも入手させてくれた。江草刑事は、警視庁へ戻り、テナントリストを分析したが、事件関連との接点が無く、なぜあの現場なのか疑問が解けなかった。
   
 しばらくすると、新米の木崎刑事が捜査一課へ戻ってきて殺人事件当日の現場にあった靴跡と痕跡から犯人は、足のサイズ27.5センチのスニーカーを履いていた背の高い男性という事が分かり、凶器のナイフは、おそらく刃渡り15~20センチであり今もなおどこへ犯人が捨てたか捜索中と教えてくれた。
なぜこんなに事件当日から1カ月半もかかったかというと、殺人現場は線路沿いで、意外と日中は人通りが多く現場検証には、最先端技術の科捜研にも協力してもらったと言っていた。それを聞いて作部刑事と江草刑事は、二人とも顔を見合わせて(これは、かなりのプロ?)と直感でびっくりしていた。
 そして、夕方になり、いつもと同様に夜遅くまで捜査一課の6名は話し合っていた。すると、その頃依頼していた自殺現場のエレベーターのモニターが、宅急便で届いた。
そして、すぐに元鑑識課にもいた作部刑事が、手際よくスクリーンに映し出してくれた。江草刑事は、映像が映し出されている間、心臓の高鳴りがしばらくおさまらなかった。自殺の死亡推定時刻は、当時の捜査資料からも11時30分から2時になっていたので、エレベータに乗った中に塩見氏の姿が現れるのは、会社退出後の現地到着6時30分から最終2時までと確信してじっくり捜査員全員で映像を見ていた。すると、「ちょっと、止めて」と山縣刑事の声がし、作部刑事は、映像を止めた。丁度映像時刻が、11時24分の表示で映像が止まった。
捜査員全員でよく見ると、脅かされ気味な塩見氏らしい女性ともう一人若い男性が、乗っていた。そして、江草刑事は、「はっ、これは、やつ?」と思わず声を発していた。
 作部刑事も、「えー、。なぜ。やつ?」とびっくりしていた。
 驚くことに、塩見氏と映っていたのは、ブテイック屋の店員の一人押山哲治だった。
 先日、江草刑事も作部刑事も殺人事件後ブテイック屋に聞き込みに行っていたが、まさかの展開に2人とも驚いていた。しばらく、なぜ、なぜと捜査員全員で、不思議がっていた。
 翌日、捜査一課は、映像の分析をもとに、容疑者の勤務状況の裏付けからも十分押山犯行の可能性が高まり、午後1時に、丁度都内の喫茶店で1人でいるところを緊急逮捕した。
そして、取調室では、被害者江花氏からの依頼で、交際相手の殺害をしたことと勤務先の店でも日に日に彼の依頼と束縛がエスカレートしていき、とうとう江花氏を殺害してしまったと自白した。そして、この事件は、結末を迎えた。
 捜査終了後、江草刑事は作部刑事に、「いやー、無事終わりましたな。何回か二転三転して、考えられない展開でしたな。」と言った。作部刑事は、「いやいや、さすが、捜査のエース江草さんですなあ。いやー、よくやってくれましたよ。自殺も覆って。よかった。よかった。私は、今更なんですが、ファッション業界の取引先の方ばかり追ってましたよ。よかった。よかった。」と答えた。そして、2人は、いつもの居酒屋へ警視庁を去った。