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天地孤独

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失われた恋




黄昏の夢路を走る木枯らしの掠れた声が私の先を
 道ゆき、烟(けぶ)る、月の下
 過ぎ去るまちに午後の雷鳴
  とどろいて、裂ける

 (いつの日か頰笑む君が疎ましく)
 (新雪の解け切るまえの訣別に)
 (窶(やつ)る童子は唖者(あしゃ)となり)
 空は風さえ憩うのに
 照り降るゆきは白々淡く
 迎えるものは後悔ばかり
 
 私の声がきこえぬならば
 これからは、花の言葉をたくしましょう
 (ゆく過去に軋む夜肌が雪景に、足りぬ名前を物思う)
 (傍らで、心はしんと感知せず、つらり夜空の弧(こ)をなぞる)
 
 
サヨウナラ──おもいの人へ告げた朝
  過ぎゆく冬の虚しさを聞く
   ふるさとの地は白銀色に震えていた───
 
寒空にかなしみ潤い滲む眼で
  私を見つめた健気なひとよ
   これからは、亀裂のうえをおどりましょう
作品名:天地孤独 作家名:ShimeiKyouka