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 不老不死は厄介。だけど十七歳は便利。もちろんあたしは十七歳じゃないから、つまり未成熟っぽい身体つきに制服を着て少しはだけさせている(少し、っていうのがミソ)のが、とっても都合が良い。都合が良い、と言えば、今の都もあたしに合っている。この世に暴けない闇はないって風にピカピカ輝く東京の、その輝きに目が眩んだ人の中でなら、あたしみたいな住所不定分類不明年齢詐称源氏名とわこにも、居場所がある。
「だからね、とわこちゃん。それは愛じゃないんだよ」
 と、君が言う。あたしはここ最近のお気に入りの職場である違法キャバクラにてお説教を受けていた。
「どうして。リリィと同じでしょ」
「違う! とわこちゃんに向けられるのは、たった一時間ぽっちの性欲でしょう? それは、愛じゃないよ。恋とも呼べないよ。バイシュンとか、エンコーとかっていうモンなんだよ」
「どうしてリリィのは愛なの」
「だって、リリがたーくんから貰うのは、そんな短い期間じゃないんだよ。もう一年、一緒にいるし、これからも、一生、リリだけを見ていてくれるって、言ってくれてるんだもん」
 あたしにはわからない。一年とか一生なら恋とか愛で、一時間だと、なんて言ったっけ、君が鼻で笑うようななにかになってしまうだなんて。一時間と一年の違いが、そもそもあたしにはわからない。そんなの、気がつくとあったりなかったりする雲のようなものでしょ。どっちかというと、一年よりも一時間の方が、すごいもののように思えるよ。だって、二文字と三文字だ。一文字の違いは、あたしにもはっきり見えるから。
 君に言ったら、すごくすっごく怒られたけど。
「とわこちゃんってさ、誰か好きになったことって、あるの?」
「あるよ、もちろん」
「どんな人」
「え? えーっとねえ、好きな人に、似てる人」
「……はあ? なに、好きなタイプがあるってこと?」
「人にタイプなんてないでしょ。だってみんな同じじゃない。あたしが出会う人はあたしに出会った人の焼き直しで、だから、あたしが好きになるのは、いつだっていつかのやり直しなんだよ。だから、だからね、あたしは、あたしが好きな人に似ている人が、好き、なの」
 君の表情が一向に理解を示さないので、あせってあたしは言葉を重ねたけれど、次第にそれは苛立ちと侮蔑で綺麗な赤に染まっていった。
「それ、人として、最低だと、リリは思う」
 そっか。と思う。つまり、あたしは最低限、人、なんだ。
「……なんで笑ってるの。信じられない」
「タイプ、って言うのかわからないけど。あたし、あたしと一緒に、死のうって、言ってくれる人が好きだよ」
 だって、つまり、それって、愛でしょう?
 君はあたしを見ずに立ち上がった。「どこ行くの」と聞くと「仕事」とだけ言う。「仕事? ああ。リリィは、愛する人と一緒にいるために、愛でも恋でもないものを、売りに行くんだね?」
「……うるさい。それ以上なにか言ったら、ほんと、殺すよ」
「それが本当なら、きっとあたし、リリィのこと、愛してるわ」
作品名:リピート 作家名:ひいろ