吐きだせないたまごのはなし
それは、成長したはずなのに どうしても 周りと違う 自分への苛立ちだったり、
大きな期待と愛情を注がれすぎて、腐りきってしまった家族への愛憎だったり、
どうしても言えない、何年たっても消えてくれない同性の あの子への恋情だったり、
そんな歪で破裂しそうな たまごを 二十年近く抱えて生きている。
ただ楽に息をしようと 必死に 逃げて 逃げて その度に
異端だと 責め立てられ、同じである事を 求められて ここまで 永らえている。
この たまごを 孵化させる すべを 探して
唯一の拠りどころである、自らのはらから 生まれた ことばのかたまりだけを
今日も なんとか 吐き出している。
作品名:吐きだせないたまごのはなし 作家名:ふゆお