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 そして障がい者施設の存続のためにメイソンはオフィスワードに行った。
「あの施設運営の大半はミラー婦人の財産で賄ってたもんで」
「それをあんたらの公的資金で何とかならないかって訊いてんだよ」
「それはちょっと……」
「お前ら国家公務員のくせに、融通が利かねえなあ。子供達を託児所に預けるってのかよ?二十四時間看てなきゃいけないんだぞ。俺達ここんとこ寝てないんだぞ。子供達をどうするんだよ!」
「我々オフィスワードの財源も限られているのです。いろいろなものに使わなければいけないので障がい者を看ている余裕までは……」
「おい、障がい者を看てる余裕まではってどういう意味だよ。おい障がい者を看ている余裕まではってどういう意味だよ」
 メイソンは甲斐もなくオフィスワードを立ち去った。

 そして数日後資金の提供を精査してる会社に面接に行った。
「ええ、学歴は?別にニュージャージー州やニューヨーク州の州立の大学などではいけないという訳ではないのです」
「学歴は中卒です」
「……ではケアギバー等の資格などはお持ちでは?」
「今資格を取るために申請中です。来月から夜間の学校に行きます」
「そうですか……あなた自身には資金を提供する人材と認められないのですが……」
「そうですか……」
「でも一つだけ。一つだけ望みがあります」
「望み?」
「ミラー婦人の遺品の日記です。そこにこう書かれています」

 今日は登山を手伝ってくれてありがとう。幸せだったわ。ありがとうメイソン。あなたは私の息子です。
「……と書かれています。もちろん実際の子供ではないので遺産相続もできないし、この日記も公式のものではないから、何の証明にもならないのですが……」
 そして精査人はメイソンの目をじっと見た。
「ただ私どもはあなたの目を信じます。資金提供しましょう。施設運営が一年間続けば法人への格上げということも」
「ありがとうございます」
 メイソンは深々と頭を下げた。

 人は交差点でぶつかったことなんか覚えちゃいないが、自分が正しくないと言われたことは一生忘れない。

 メイソンとシャロンの出会いは何だったんだろう。

 一月の息が白くなる朝、メイソンはセントラルパークをゆっくり歩く。妙に穏やかですがすがしい。足取りは軽やかだ。
 あんたもいろいろあったんだろうよ。俺にもさ。渇いた生活だったり、少しはましになったり。でも喉が渇かない時期だけが正解じゃない。

 シャロン。俺はあなたに二度救われた。今度は俺があんたを救う番だ。
人のために生きようと思ってからだよ。なあシャロン婦人。俺には今血が流れている。命の鼓動が聴こえる。心の奥底に鐘が鳴るのを感じる。あのときの朝日のようにさ。

今日もメイソンはミラー邸のホールに行く。
子供達はぬいぐるみをしゃぶったり、
アニメのような声で一日中叫んだり、
事務所の電話で勝手に電話しようとしたり、
年下の子供の顔中にキスをしたり、
そしてアレクが急に大人しくなったかと思ったら、シャロンの写真たてをもってじーっとみてるんだ。大勢いる窮屈なホールで張り込みの刑事みたいに、背中を丸くしてじーっと見てるんだよ。
こういった子供達にもわかるんだなあ。
アレクったらシャロンの写真を見て本当に懐かしそうな目をするんだ。本当に懐かしそうな目をさ。
                              -fin-