社会に不適合な二人の
昔取った杵柄のような気がしたけど、そんなことはなかった。
弟が強奪していった書道漫画「とめはね!」を返しに来た時の話。
「習字やると字が綺麗になるって言うけど、ならないよな。」
私の家は祖母が習字を家族に教えていたので、祖母の孫は小学校に入るまで全員習字を習わせられていました。
私と弟も祖母の指導で習字を数年間練習していましたが、私は字が下手、弟はさらに下手という体たらく。
「習ったこと全く続けなかったからじゃないの?」
習字をしているときは正座をするように言われていたので、それが嫌で私たちは小学校にあがると同時に全くやらなくなったのです。
「いや、でもさ、いとこの兄ちゃんは、もうやってないけど字が上手いじゃん。」
「まあ。」
「やってなくても字が上手い人もいるじゃん。」
「そりゃねえ。」
「習字って関係ないと思うんだよね。習った俺下手だし。」
「やってないよりはやった方が上手くなると思うよ。」
「でも習字だよ。ペン字のやつ習った方が良いでしょ。だって筆の書き方習って普通の字が上手くなるか?」
「いや、私たち一緒に硬筆の練習もしてたよね?」
「え?」
「え?」
単純に、弟は習字をしたことは記憶にあるけど、習ったことは全く憶えてないから字が下手なのでした。
弟はずっとあれー?と呟いていました。
――――
[習字]…お手本を見て書く、の繰り返しで字の書き方を学ぶのが習字、書写とも言う。
[書道]…好きな字を書いて芸術作品にするのが書道。
[とめはね!]…河合克敏著の高校書道部の漫画。帰国子女の主人公が字の汚いヒロインと一緒に書道を学んでいく。主人公以外全員女性部員なのに全くハーレム漫画ではない。
作品名:社会に不適合な二人の 作家名:春川柳絮